「は?父親??」



 驚くラビに、はコクンと静かに頷いた













「この村にいるなんて知らなかったの・・・
 私が生まれたのはイギリスで、一人でこの国に来たから…
 両親はイギリスにいるって思ってたの。
 でも、あの館のご主人が、おばあちゃんの娘夫婦だっていう2人がここに住んでるって・・・」




「・・・、お前両親って・・・?」







「・・・小さい頃に捨てられて、今日まで会ってないよ。」




 そう言ってラビの服の袖をキュッと掴んだ
 少し震えているのが伝わってくる








「・・・・・・?」





「・・・ラビ・・・私ね・・・」





















 ドンッッッ!!!!!







「「!!」」


 が何かを言いかけた時、村の方から何かが爆発する音が轟いた













「・・・今の・・・!?」


『ザーザー・・・、ラビ!!』




「ブックマン!?」


「ジジィ、これって・・・!」





『今すぐこい、AKUMAだ!!!!』




 とラビはゴーレムから発せられたブックマンの声を聞き
 急いで村の方へと駆け出した














 Spinning Dance ---8





















「ブックマン・・・っっっ!?」




 2人が駆けつけると、村の入り口付近が燃えていた



 その中央にブックマンとAKUMAが3体交戦中であった








「ラビ、応戦せい!
 はもう1体いるAKUMAが逃げた、探して倒すのじゃ!!」




「了解!」


「わかった!!」








 ラビはブックマンの元へと向かい
 は村の方へと駆け出した





「きゃーーー!!」


 しばらく走っていくと、女の甲高い叫び声が聞こえてきた
 道が開けたところで、若い女の人が腰を抜かしている
 目の前には・・・




「・・・AKUMA!?」








 AKUMAが女の人に向けて弾丸を発射する


「いやーーーー!!!!!」

 その瞬間女の人の叫び声が辺りに木霊す





「-----虹霞---踊りの型・鎌鼬!」


 だがその弾丸は女の人の顔面に到達する前にすっぱりと割れて爆発した
 そして女の人の前に庇うようにが立っている
 手にもつのは一枚の羽衣・・・イノセンス"虹霞"





「・・・あ、あ・・・」

「大丈夫ですか!?」



「あ、は、はい・・・!」


 が振り返ると
 女の人は涙をボロボロと零しながらもコクコクと必死に頷いている
 だが、AKUMAはそれに構うことなく再び銃口を2人に向ける






「・・・っ、天衣!!」


 その弾丸が飛んでくる前には女の人の体を掴んで宙に舞った
 虹霞を羽衣のように羽織り、フワリと高く跳ぶ




「・・・あれは、レベル2・・・だよね?」


 典型的な姿をしていない
 全身を鉄の甲冑のようなもので覆われている長身のAKUMAだ
 だが、今まで見てきたレベル2とはどこか違う・・・




「・・・どうなってるの?」


 はサッと建物の物陰に着地し女の人を降ろした



「ここでじっとしていられますね?」

「は、はい・・・!!」


 女の人が再び頷いたのを確認すると
 は再び空を舞うように跳び、AKUMAの前に降り立った






「・・・お前、レベル2よね?」


「・・・・・・」


 AKUMAはなにも喋ろうとはしない



「・・・自我がないの?でも、そんなレベル2は見たことがない・・・」


 尚もAKUMAは言葉を発するわけもなく、
 先ほどから2人に銃口を向けていた小さなピストルをジッと見ているだけだ



 カチャン・・・!



「っ!?」


 だが次の瞬間、なんの前触れもなくその銃口がへと向かう




 ダンダンダンダン!!

「!」


 その銃口から発射された弾丸を
 は素早く地を踏み鳴らすようによけて行く

 だが、最後の一発がのよけた先を見計らうように飛んできた


「っ・・・鎌鼬!」


 だがが虹霞をサッと振り上げると
 鋭い風が弾丸を真っ二つにした
 そして、の足がキュッと止まる






「・・・違う・・・」


 思わずAKUMAを見つめるの顔が強張った





「・・・・・・あなたは・・・まさか・・・」


 
 確信なんてものは一切ない
 だが、爆発が起こったのは・・・あの人が出て行った後だ・・・
 久しぶりに会ったから感じたと思っていた違和感は、ひょっとして・・・





「・・・」


 AKUMAは黙ってとの間合いも詰めずその場を動かない
 レベル2だって言うのに、言葉も発しない・・・本当に自我がないように見える







「・・・あ、あなたまさか・・・!!」


 が叫ぶと、AKUMAはフッと消えた



「なっ・・・」


「きゃーーーーー!!!!!!!!!」


 が目を見張ると同時に
 背後の物陰にいる女の人の叫び声が上がった
 驚いて振り返ると・・・

「なっ、待て!!」


 物陰にいる女の人の傍にAKUMAが移動していて、そのまま引っつかんで走り出したのだ
 が急いで後を追う
 その物陰は家と家の間で先は行き止まりだ
 助けられるとふんだがその物陰に滑るように入った
 案の定AKUMAと女の人は行き止まりの壁の前にいて---


「・・・え?」


 だが次の瞬間、AKUMAは女の人を抱え込んでふっと消えた
 驚いたが何度か瞬きをしても、そこに女の人の姿も、AKUMAの姿もない




「どうなって・・・っ、まさか!!」

 何かを予感したが虹霞とともに高い高い壁目掛けて勢いよく跳ぶ
 タン、と壁の上に足をつけ下を見下げると・・・





「やっぱり、いた!」

 そこにはさっきまで反対側にいたAKUMAが女の人を抱えて走り去ろうとしていた


「鎌鼬!!!」

 は躊躇うことなく虹霞を振り上げる
 すると、鋭く尖った風がAKUMA目掛けて飛び出す
 気配で気づいたのかAKUMAが振り返るが
 風はバシリとAKUMAに当たりその反動で女の人は投げ出され地面に転がり込んだ



「やっぱり、あなたは・・・!」

 はサッと跳びあがり地面に着地するが、その瞬間AKUMAは再びフッと消え去った




「っしまった!!!」


 油断していただが、地面に転がった女の人が心配でそちらに急いで駆け寄る



「・・・逃げられた・・・けど、きっとあれが、誘拐事件の正体・・・?」


 そんなに高くないところから落ちた女の人に酷い怪我は見受けられないが
 怖かったのか気を失っている






!」


 そこへ、ラビとブックマン、騒ぎを聞きつけたのだろう館の主人が駆け込んできた


「大丈夫ですか!?」

 主人は女の人を起こしてゆするが、応答はない



「まさか・・・!」

「大丈夫です、気を失っているだけです。」


「本当ですか!?」

「はい。ただ、念のため医者のところへ・・・」

「すぐそこに村の診療所がありますので、運んで行きます!」



「お願いします。」


 主人は血相を変えて女の人を抱き上げると急いで走っていった













「・・・。」


「ブックマン・・・ごめんなさい、どうやら逃げちゃったみたい。」



「わしらの方も逃げていった。
 レベル2だったんだがな、特に意味のないことを喋っていただけだった。
 そちらのAKUMAはなにかわかったか・・・?」




 はチラリとラビを見た
 ラビはどうしてこちらを見たのかわからず驚いている



「・・・多分、誘拐犯は私と戦ったAKUMAだと思う。」


「・・・そうか。」


「なんかわかったんか!?」


 えぇ、と言っては立ち上がった






「どういう理屈かはわからないけど・・・
 さっき女の人を連れ去ろうとしたAKUMAが壁の前で姿を消して、
 次はその壁の反対側・・・こっちにいたの。
 恐らく、物をすり抜けたり透明になれるとかいう類の能力か何か、だと思う。」



「奇怪現象の正体はイノセンスじゃなかったってことか。」


「そのようじゃな。・・・、どうした?」


 2人がを見ると、は下を向いていた
 虹霞を持つ手が震えている




、なにかあったんか?」

 それは、さっきログハウスの前でラビと話している時と同じだった
 不安になったラビがに近づくと
 はすぐにラビの服の袖を掴んだ






「・・・、大丈夫か?」


「・・・・・・・・・」




「・・・2人とも、ちょっと来て・・・」












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あれ、あんまり核心にいってねー(笑)



2008 12 14


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