「こちらです。」


 主人は2階に上がってすぐの部屋を開けた
 探索部隊には部屋の前で待機してもらって、3人は中に入った














 Spinning Dance ---7








 そこには、普通の少女の部屋が恐らく事件以降そのままの状態で保存されていた



「特に変わった様子はなさそうじゃな・・・」


「そうみたいね。」


 部屋の窓には鍵がかかっている
 荒らされたような痕跡もない




「ドアの鍵も閉めていたのですか?」


「妻はそうだと言っていたそうです。
 誘拐事件が起きて以降、どの家もそうしていましたから・・・」


「でしたら、やっぱり鍵がかけられていたと見て間違いないでしょうね。」

「はい。」



 ラビとブックマンも部屋を見て回るが
 特に変わった形跡は見つからないらしい





「奇怪現象とみて間違いなさそうじゃな。」


「誘拐ってことは、ひょっとしたらイノセンスじゃなくAKUMAかもしれねーな・・・」


 と言葉を交わしている





、ひとまず今日は帰るとしよう。
 恐らくここからは何も出ないじゃろう。」



「あ、うん、わかった。」



 が帰ると主人に言うと





「そうですか、お力になれず・・・すみません。」


 そういってうな垂れた


「謝らないで下さい。
 私達は近くの民宿にいますので、なにかあったらそちらへ来てください。」



 がそういって3人は部屋を出た






「あ、お待ち下さい!!」



 が、主人も慌てて部屋から出てきた









「なにかまだご用ですか?」



「いえ、あの・・・貴方は、・・・と仰いましたよね?」


 そう言っての元までやってきた




「・・・はい、そうですが・・・なにか?」




「もしや、エリシア さんと何かご関係がありますか!?」



「おばあちゃん!?」


 まさかここで出てくる名前だとは思ってなかったらしく
 は目をまんまるに見開いて驚いた





「おばあちゃんを知ってるんですか!?」


「おや、お孫さんでしたか!」


 おぉぉぉー、とと主人は
 お互い驚いているのか喜んでいるのかわからないような歓声を上げた







「なんで知っているんですか!?」


「うちの父親は、エリシアさんのいた村に住んでいたんですよ。
 ほら、すぐ近くのあの村です!!
 いやー偶然だなー会えて嬉しいですよ。」


 どうやらお互い喜んでいるらしい



「なに、エリシアって聞こえたけど・・・の知り合い?」

「おばあちゃんだよ!!」



 は本当に嬉しそうに目を輝かせている
 だが主人はその後、少し目を伏せた




「ただ・・・その・・・お亡くなりになったというのも聞いています。」


「え、あ・・・」


 その言葉に、も一気に悲しそうな顔になった






「・・・はい、半年前に亡くなりました。」


「それだけじゃないんです。」



「・・・なにか?」





「        」




 次に主人が言った言葉に、はまた目を見開いた
 だが、先程までの嬉しそうな驚き方とは明らかに違った
 今にも泣きそうな顔だったのだ
 しかしなんと言ったのかは、ラビとブックマンにはわからなかった





















、どっか行くんか?」


 その後、民宿に帰り日も暮れて、夕飯を食べた
 するとはちょっと出てくる、と行って宿を出て行こうとしだした



「うん。ちょっと散歩だよ・・・あんまり遠くへ行かないから。」



「・・・承知した。なにかあり次第、ゴーレムで知らせる。」

「うん。行ってきます。」



 が民宿を出て行ったのを確認したラビとブックマンは目配せをした
 そしてラビも宿を出て行った







 は民宿を後にすると、しっかりとした足取りである場所へと向かっていった
 そこは先程訪れた豪邸を通り過ぎ、村の入り口を通り過ぎ、村はずれの森の入り口だった
 恐らく豪邸の妻が自殺した場所もここだろう

 だが森には入らなかった
 その森の入り口に、小さなログハウスがある


「・・・・・・・・・」



 はそのログハウスの前にそっと近寄った
 中からは明かりが漏れているが、人が動いている気配はない
 そのドアの前に立ったまま、は動こうとしなかった
 ノックしかけては手を下ろし、完全に戸惑っているようだ



「・・・ウジウジしたってしょうがない。行こうか、。」


 は自分に言い聞かすように呟き、意を決したようにノックしようとした





 だが、ノックする寸前にガチャリとドアのノブが回る音がした

「っ・・・」


 は驚いたが、身動きがとれないのかその場から動こうとしない
 だが、微かに震えている




「・・・っあ!」

 そしてドアが開こうとした瞬間、誰かに腕を引っ張られた












 ギィ・・・

 ゆっくりとドアが開かれ、中から中年の背の高い男が出てきた
 その男はドアを開けたまま、その場で静止している



「・・・っ・・・ラ」

「しっ!」



 は家の壁とドアでちょうど隠れられるところに身を潜めた
 後ろには、腕を引っ張ってくれたラビもいる




「・・・」

 中年の男はしばらく静止して、そのまま何も気にしないように外へと出て行った
 ドアも開けっ放しだ








「・・・っはぁ、ラビ・・・つけてきたの?」


 は安心したように息をはき、ラビの方へと向き直った



「ゴメンさ
 あんまりにも様子が変だったもんだからさ。」



「・・・ごめん、心配かけて・・・」


 は去って消えてしまった男を見るように村の明かりを見た





「・・・今のやつ、知り合いなんだろ?」


「っ・・・!」



「事件と関係あるんか?」


 聞いてくるラビの目は真剣で
 は目を逸らせなかった


「・・・まだ、わかんない。」





 ラビの目をジーッと見つめて、やがてポツリと呟いた


「あの人は、私を捨てたお父さんだよ。」


















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主人公の核心へ、ちょっくらレッツゴー(笑)



2008 11 30


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