、あなたに話しておきたいことがあるの。」











 そう言ったおばあちゃんはもう長くはなかった


 おばあちゃんも、そして私も覚悟はしていた















「聞いてくれる?おばあちゃんの、ちっぽけな話。」


 暖かい日差しが降り注ぐテラスで椅子に腰掛けたおばあちゃん

 その肩には生涯大事にしてきた東洋の羽衣が掛けてあった・・・


















 Spinning Dance ---13




























 ガン!!!

「きゃぁっ!!」


 激しい金属音の後に少女の叫び声が辺りに響き渡る






「・・・やっぱりここなのね。」

 その叫び声を聞いたリナリーは、それでもゆっくりとその場所に歩いていく









「おい、もう終わりか?」


「や、まだまだ!!!」


 へたり込む少女・の前に立ちはだかる少年
 その少年を睨み上げ、は再び立ち上がる




 が、

!」


 が手に持つ赤い剣を構える前に、リナリーが到着し声を掛けた





「リナリー?どうかしたの??」


 突然声を掛けられ驚いたはほけっとリナリーを見る



「さっき兄さんから連絡が入って・・・って、神田?」

 リナリーがゆっくりと修練場に足を踏み入れると、の前に立っていた神田がすっと歩き出した



「え、神田!まだ終わってない!!」

「気が抜けたヤツの相手なんてするだけ無駄だ。」

「えーーー!!!じゃぁ、また明日もやってくれる!?」

「・・・勝手にしろ。」


 神田は鍛練用に持ち出した剣をポイとそこら辺に投げると修練場を後にした







「・・・ひょっとしてタイミングが悪かったかしら?」

「ううん、リナリーのせいじゃないよ。神田が短気なだけ。」


 申し訳なさそうに近づくリナリーに笑って答えた
 持っていた赤い剣を元の羽衣に戻した



「それにしても、よく神田が稽古つけてくれる気になったわね。」


「うーん・・・なんていうか、怒らせちゃったからね。」


「へ?」


「いやー私、第二解放までは出来るように師匠に訓練つけてもらったんだけど、
 中身まではちゃんとやらなくってさ。
 んで剣に変化させることは出来てもちゃんと剣術稽古したことなかったんだって言ったら・・・」

「神田がキレた、と。」


 リナリーが呆れたように言うとは深く深く頷いた



「でもそのおかげで稽古つけてって言ったらあっさり了承してくれたんだ!」

 その後嬉しそうに笑うと、リナリーもよかったわね、と言って笑った














「でもやっぱり、はすごいわね。」


「へ?なんで??」


 それからリナリーに促され修練場を後にした
 2人で廊下を歩きながら他愛のない話をする



「神田、嫌がってる割にはに構うじゃない?」

「・・・そうなのかな?」

「私はそう思うけど・・・。」

「うーん・・・神田は確かに一匹狼なとこあるよね・・・戦いの邪魔なら仲間も見捨てるって聞くし・・・。
 けど、それでも、こうやって私のお願い聞いてくれたり、良いところはちゃんとあるんだよ。」

「・・・は、神田を信じてるのね。」

「うん、そうかも・・・だって、やっぱり仲間だもん!」


 そう言ってはフワリと笑った


「・・・って、少し変わったわね。」

「へ!?」

 突然何を言い出すんだと驚いたが、リナリーはニッコリと微笑んでいる


「まだここに来て日が浅いけど、それでも少し変わったわね。」

「ど、どこが!?」


「前よりもここに溶け込んだ。」


「・・・え?」

「今思えば、教団に入ってきたばかりのって壁があったような気がするの。
 あの頃は気づかなかったけど・・・でもそれが今はないように思えるの。」

「・・・どうして?」

「前よりも私達に見せる笑顔が可愛いのよ。」

「は!?」


 綺麗に微笑んでいるリナリーにそんなことを言われ、は恥ずかしくて顔を赤らめた
 思わず足も止まる


「何言ってるのリナリー、どっか打った!?」

「ふふ、違うわよ。ただそう思っただけ。」


 そう言ってリナリーは歩き続けるので
 も急いでその後を追い横に並ぶ





 壁なんて作ってるつもりはなかったのに・・・

 ましてやリナリー達にまで・・・


「・・・ゴメンねリナリー。」

「どうして謝るの?」

「や、無自覚だったとしてもそうしてたなら申し訳ない・・・」

「そんなことないわよ?だって今のでしょう?」


 その言葉にズキッと心の奥が疼いた



「・・・うん、ありがとう。」







 でも、それでも今はちゃんと笑えてるなら


 それはきっと・・・
































「・・・で、どうして化学室?」


 そんな2人が辿り着いたのは化学室
 意味のわからないは扉の前ではたと立ち止まった




「あぁ、言ってなかったわね、帰ってきたのよ?」


「へ?何が??」


「何がじゃなくて、誰がだけどね。
 ラビ達が任務終えて帰ってきたの。」


「!!」


 その言葉を聞いたは何も考えずにガチャリとドアノブを捻った





「あれ、にリナリー。」


 開けてすぐに目に入ったのはジョニーとタップ
 2人して目にクマを作りながらコーヒーを飲みソファに座っている


「ねぇ、ラビ達帰ってきたの!?」

「あぁ、今は室長に報告してる。その内戻ってくるんじゃない?」


 3日前から寝ていないという2人は今にも倒れそうで見ていて痛々しい


「・・・大丈夫?」

「ハハ・・・まぁ、慣れてるし。」

 が苦笑いすると、2人も乾いた笑いを零した

 リナリーはすでに他の人達へとコーヒーを淹れているので
 はジョニーとタップがくつろいでいるソファの近くに椅子を引き寄せ座った



「今は何を研究してるの?」


「・・・言ってわかるなら説明するけど。」


「・・・ゴメン、やっぱいいや。」


「だろうな・・・ま、とりあえず俺達の作業はひと段落だ。な、ジョニー?」

「そうだなタップ。他の奴らには悪いけど、寝たい・・・」


「みんな大変だね、お疲れ様です。」


 が恭しくお辞儀をするとジョニーとタップは可笑しそうに笑った



は気遣ってくれるからいいんだよ。
 室長なんてさ〜〜〜サボってばっかりでハンコくれないし!」

「ホントだよな!!全く、あの人のおかげで仕事増えてるとこもあるのに!!!」


「でもそれだけみんな期待されてるんだよ、きっと。」


「「・・・そうかな?」」


「そうだよ。
 まぁ確かに働き過ぎなとこもあるけど、みんながこうしてサポートしてくれるから私達は戦えるんだよ!」


 そう言ってがニコリと笑うと
 ジョニーとタップはお互いに顔を見合わせて申し訳なさそうに笑った



「・・・そんなことないよ。」

「うん?」

「そうだよ、俺達はなんだかんだで部屋に閉じこもって机にがっついて仕事してるだけ。」

達みたいに危険な戦場には出ない。むしろ出てもいらない。」

「・・・2人とも・・・」

「だからの方が何倍も偉いんだぜ?」

「そうだよ!!」

 送り出す側の辛さが垣間見えた気がした

 けれど、それでもはそうは思わなかった



「・・・偉くはないよ。
 そりゃ、戦いには行くけど、机で仕事なんて私達には出来ないし。
 ジョニー達がいるから、エクソシストは在るの。」





「・・・ってすげぇな。」

「・・・ホント、いいやつだよ。」


 2人に笑顔でそう言われ、もフワリと微笑んだ

 こんな風に思えるのは、きっと・・・


















「お、?」









 ガチャリと奥の扉が開いたと思うと




「ラビ!」


 ひょいっとラビが出てきた
 はそれに気づき真っ先に駆け寄る



「なんでここにいるんさ?」

「リナリーに帰ってきたって教えてもらったからだよ!!」

「ほぉ、出迎え?」

「そんなとこ。」

「そっか、サンキュ!」

「うん。ラビ!」

「・・・なんさ?」


「おかえり。」



 そう言っては微笑んだ
 一瞬ビックリしたラビだったが、すぐに嬉しそうにの頭を撫で笑った
 もちろん、偽りない笑顔で



「・・・ただいま。」

「うん!ずいぶんと長い任務だったね。怪我は?」

「探索部隊がちょいと負傷したくらい。俺とジジィはへっちゃら!」

「そ、よかった。」

は何してたんさ?」

「神田にね、稽古つけてもらってたの。」

「ユウに!?よくオッケーしたなぁ。」

「あはは、ちょっとね。」




 2人で他愛のない話をしていると、後ろの扉がガチャリと開いた



「・・・か。」


「あ、ブックマン。おかえりなさい!」


 話を終えたブックマンとコムイが出てきた


「ラビ、ヘブラスカのところを行くから着いてきて!」


 コムイが何か袋を持ってそう促した

「それ・・・イノセンス?」

「そうだよ、今回はアタリだったみたいだね。」

「そっか・・・よかった。」

 伯爵の手に渡る前に手に入れることが出来たらしい
 はホッと胸を撫で下ろした


「ラビ、行くぞ。」

「へいへい。んじゃね!また後で〜!」

「うん、いってらっしゃい!」


 コムイとブックマンに急かされ、ラビはあっという間に化学室を後にした
 それを見送ったは、1人でフワリと微笑んだ
 と、いうよりは頬が緩んだのかもしれない

 ・・・無事でよかった、と。






「あ、そうだ。」

 しばらくそうしていた
 何かを思い出してみんなにコーヒーを振舞っているリナリーの元へ駆け寄った


「ねぇねぇリナリー!」

・・・どうかしたの?」

「なんでラビ達が帰ってきたって教えてくれたの?」


 別に帰ってきたら教えてくれと頼んだ覚えがにはなかった

 リナリーは一瞬何かを考えると、ニッコリと笑って


「なんとなくよ。」

 と言った


「・・・へ?」

「特に意味はないわ。ただ、がラビの帰りを待ちわびてるように見えたから。」

「え、私が?」

「そう、私にはね。」

 そう言ってリナリーは綺麗にウィンクをすると、再びコーヒーを配って回り始めた






「・・・そうなのかな??」













 変わったねとか

 仲間思いだねとか

 そう見えたのは、そう思えるようになったのはきっと・・・


はそれでも、他の奴らに愛されてるし。」



 ラビがそう言ってくれたから

 信じられたんだと思うよ

















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うぅ〜やっと書けたぁ・・・
思案すること2ヶ月・・・どんだけ。(笑)



 2009 05 05

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