「あら、丁度いいところに来たわね〜!
今日は渾身のアップルパイを作ったんだけど
「食べるーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
ジェリーが言い終わらぬ内に、は笑顔でキッチンへと走り出した
「・・・、ホント甘いもん好きだよなぁ〜ユウ?」
「俺に聞くな。」
それを楽しそうに見ているラビとどうでもいいと顔に書いてある神田が後を追った
Spinning Dance ---14
「美味しすぎる・・・」
そう言って頬を緩ませる
ちなみに目の前のアップルパイは本日2皿目である
「よく食うなぁ・・・」
「鍛練前に腹ごしらえしないと神田厳しいから。ね?」
「俺に振るな。」
今日も鍛練お願いします!と言われ修練場へと向かう途中だったのだが
運悪くジェリーに声を掛けられ、思いがけずおやつタイムとなってしまった
故に神田の気分は優れない
「神田、なんでそんなに眉間に皺寄せてるのよ。お茶渋い?」
「誰のせいだ誰の。」
「さぁ?」
「・・・」
「ユウ、抜刀だけは勘弁。」
神田の周りだけ一気に空気が冷え込んだため、止む無くラビが突っ込んだ
が、どうやら逆効果だったらしい
「ファーストネームを気安く呼ぶなっつってんだろ!!!!」
「えぇぇぇなんで!?!?」
結局神田は抜刀しラビの首筋に剣をつきたてた
「、お助け!!!」
「ん?もうちょいで食べ終わるから待って。」
「嘘ーーー!!!!!」
庇ってあげたはあと一口のアップルパイを呑気に食べていて見向きもしない
万事休す
そんな言葉がラビの頭を駆け巡った・・・が、視界の片隅にいたがチラリと目線を上げた
神田は本当にファーストネームで呼ばれることを嫌っていて、さっきの不機嫌さと相まって目が本気だ
そんな神田に剣をつきつけられヒィヒィ言っているラビ
「全く、しょうがないなぁ〜・・・」
それを見取ったは苦笑いしながら最後の一口をヒョイと口の中に放り込んだ
「よし、ご馳走様。神田、終わったから行こう?」
そして呑気に立ち上がってそう言えば
神田は一気に毒気が抜けたのか、呆れたようにため息をつきラビから離れた
「さっさと行くぞ。」
「はいはい、その前にお皿返してくるね〜!」
ようやく剣を離してもらえたラビがハァッと息を吐き出すと
はラビの皿と神田の湯呑みも一緒に食器を片しにキッチンカウンターの方へと歩いていった
「・・・、絶妙。」
「おい、もうファーストネームで呼ぶなよ。」
「了解ユウ。」
「・・・」
「ホントすいません。」
再び抜刀しかける神田に本気で頭を下げるラビ
それを見た神田は呆れただけで刀をすぐに戻した
するとラビはビックリしたように神田を見る
「・・・なんだよ。」
「いや、なんかユウってば丸くなった?」
「やはり殺されたいらしいな・・・」
「わー嘘嘘!!!!」
「・・・いつまで同じことしてるの2人とも・・・」
結局、すぐにが帰ってきたので事なきを得た
今はようやく修練場へ向け歩き出したところである
「にしても、は熱心だよなぁ。」
「何が?」
「鍛練。ほとんど毎日鍛練してんだろ?」
「・・・まぁ、一応ね。体を動かさないとさ・・・嫌なもの思い出しちゃうんだよね。」
「嫌なもの?」
「・・・師匠にメッタメタにされたこと。」
そう言ったの目は恐ろしいものを思い出してしまったと怯えている
「メッタメタって・・・」
「初めて会ったその日に弟子入りしたんだけどさ、その後早速扱かれたんだよね。
まだイノセンス自体の説明しか受けてないしで使い方なんてわかるわけないのに・・・」
そう、あれは本当に凄まじかった
「本気で死にそうになれば使い方くらい閃くだろ。」
そう言った師匠は笑ってこそいたが・・・目は本気だった
「あぁぁぁぁあもう思い出したくもない!!!!!」
「た、大変だったんさね〜・・・」
「なんであんなのが師匠なんだろ・・・おかげで毎日何かしら体を動かさないと悪夢が蘇ってくるんだよ・・・」
「まぁ、ドンマイさね。」
はぅぅ・・・と落ち込むをラビは苦笑いしながら慰める
「うぅ・・・ところでラビは師匠いるの?」
「俺っちとジジィにはいないよ。リナリーにもいないんじゃねーの?」
「そっか・・・神田は?」
「・・・」
「神田?無視ですか?」
2人の前を歩く神田はずっと我関せずといった感じで会話には入ってこなかった
だが今は神田に話を振ったというのにさらに何も言ってこない
「神田〜〜〜???」
「、ユウの師匠はティエドール元帥さ。」
「ティエドール元帥?」
「そ。俺もちらっと会っただけだけど・・・確か絵を描くのが趣味らしいさ。」
「へ〜優しそうだね、神田?」
結局ラビに教えてもらい、再び神田に振っても前と同じで何も言ってこない
不思議に思ったがヒョイッと神田の顔を覗き込むと・・・
「・・・どうしたの神田。そんなイライラしちゃって・・・」
さっきラビと騒いでいた時以上に眉間の皺が深くなっている
それはもう、ものすごく嫌ですと言っているように・・・
そしてそんな神田はは一瞥すると、
「俺はあのオヤジが大っ嫌いだ。」
と言った
それはもう禍々しいものでも見るように・・・
「「・・・・・・」」
「とにかくさっさと行くぞ。」
それに言葉を失ってしまったとラビをおいて神田は歩いていってしまった
「・・・なるほど。神田はティエドール元帥が苦手なのね。」
「師匠ってみんなそんなもんなんかね?」
「わかんない・・・けど、苦労してるのが私だけじゃないってわかってなんか安心。」
そういうの顔は安心しているとは思えないが
(未だに悪夢を思い出しているのか若干引きつっている)
「・・・師匠、ねぇ・・・」
「何、羨ましいの?」
「いや、別に・・・」
「??・・・あぁそっか、ラビの師匠はブックマンか。」
「やっぱ誰しも師匠には苦労するみたいさ・・・」
ラビも若干憂いたような顔つきになった
そんなラビを見て苦笑していると、数メートル先の修練場の扉が開く音が響いてきた
「やば、神田着いちゃった!早くしないと怒られちゃう!!」
「ユウもある意味恐い師匠さ。」
「かもね、行こうラビ!!」
「お?」
は咄嗟にラビの腕を取ると急いで走り出した
もちろん腕を取られたラビも必然的に走る
「神田待って!閉めないで!!」
稽古をしないと恐いと言っていたが、そうじゃなくてもは練習熱心だ
今だって早く稽古をしたいと顔が嬉しそうに言っている
それを見たラビはこっそりと笑った
ガチャン!
扉が閉まり、空いているスペースに移動したは早速虹霞を取り出すと赤い剣に変えた
「・・・今日はいつもより手強くなるよね。」
「あぁ?」
「だって神田、いつも以上に恐いんだもん。」
「誰のせいだ誰の。」
「さぁ?」
「・・・」
一瞬デジャヴを感じる会話が繰り広げられたと思ったら、早速2人はお互いの方へと駆け出した
そしては己のイノセンスを、神田は鍛練用に持ち出した剣を振り上げる
ガン!!!!!
「・・・すっげ。」
2人が鍛練すると聞いて興味本位で着いてきたラビは邪魔にならないように端に座って眺めていたが、
最初から容赦のない神田、そしてそれに必死に着いていくに感嘆の声を上げた
神田が剣術に長けているのは百も承知
そして鍛練だろうが一切手を抜かないのも神田である
そんな神田に着いていけている・・・
「・・・すげーさ。」
そんなを見て、ラビはフッと笑った
ガン!ガシャン!!
しばらくその光景を楽しそうにラビは眺めていた
だがふとした時、背後に気配を感じて振り返った
「やぁラビ、君は見物?」
「神田に着いていけるか、。」
「おぉ?コムイにリーバー・・・サボリ?」
そこにいたのはダンボールを3箱持っているリーバーと手ぶらのコムイだった
リーバーは前が見えないので顔を横に向けている
「失礼だよラビ!僕がサボると思う!?」
「思う。」
「酷い!酷いよ!どう思うリーバー班長!?」
「心配ないラビ、俺がいるからさせねーよ。」
「無視!?」
ズーンと無駄にテンションを下げて体育座りしてしまったコムイに呆れたようにため息をつく2人
そしてリーバーはダンボールを床に置くとラビの隣に座った
「資料室から資料持って帰る途中なんだ。
修練場からスゲー音聞こえるから来てみたってわけ。」
そして沈むコムイに変わって事情を話すと、ラビはお疲れさん、と言った
ちなみに神田とは恐らく2人が来たことに気づかず鍛練を続行中だ
「・・・そういえば。」
しばらくして少し元気になったコムイ(それでも涙目)がふっと顔を上げた
「の動きって日本舞踊だよね。」
「へ??」
「・・・東洋の踊りってことですか??」
突然素っ頓狂なことを言われ、ラビとリーバーは思わずを凝視した
「そ。日本の伝統的なダンスのこと。」
「の動きがそれなんか?」
「ちゃんと見たことはないけど、すり足とか、飛び跳ねる様子とか、そんな感じだね。」
そう言われ、改めての動きを注意して見てみる
は基本的に無駄な動きは一切しない
剣が弾かれ後ずさりしても砂場という悪条件を物ともせずキュッと足がそれを止める
また勢いよく駆け出したと思うとすり足の要領で足の裏を滑らせ間合いを詰めたりタイミングを狂わせる
避ける際も天衣を使わなくても十分な高い跳躍力でフワリと綺麗に跳びあがる
リズミカルにも見えるその動きは、確かに踊っているように見える
「のイノセンスも、日本舞踊を取り入れたような技が多くてね。
ちゃんと見たのはこれが初めてだけど、やっぱりそうなんだね〜。」
さすが室長をしているだけあってコムイは博識だ
コムイの解説を聞きながらの動きを見ていたラビとリーバーは関心したように何回も頷いた
「でも、どこでそれ覚えたんさ?」
「・・・そういえば、の祖母って日系でしたね。」
「恐らくそこから学んだんだろうね。」
の祖母
その言葉を聞き、不意にラビはと行った任務を思い出した
その中でも、事情を聞いた館の主が祖母と知り合いだと知った途端のの破顔は印象深い
それに付け加え、の生い立ち
それ故に祖母への依存度は大きいのだろう
「はおばあちゃんっ子だからな。」
「そうなの?」
「だって10年も一緒にいたんだし。」
「・・・あぁ、そうか。」
ラビの言葉にコムイとリーバーは顔を暗くする
先日、報告書と共にから生い立ちなどを聞いた
親がAKUMAだったことがあり、どうしても聞いておかなければならなかったからだ
とは言っても、実際はが進んで自分から話したのだが・・・
「・・・そっか。」
「ん?どーしたコムイ?」
「の心を開いたのは、ラビだったんだね。」
「へ?」
突然言われ、わけのわからないラビ
だが深くは言葉にせず、コムイはそれだけ言って微笑むとスッと立ち上がった
「さ、帰るよリーバー班長。サボっちゃいけませんよー?」
「何言ってるんです、室長が覗こうって言って勝手に入ったんじゃないですか!!」
とは言いつつなんだかんだ一緒に見ていたリーバーはそれ以上は怒れず、
ダンボールを再び持って立ち上がった
「じゃぁ僕らは行くね。2人に怪我だけはしないようにって伝えておいて。」
「ん?ん〜了解さ!!」
「じゃぁなラビ。」
「じゃねー!」
そして来た時と同じようにスッと立ち去った
「お疲れさん2人とも。」
その後、大きな怪我もせずにみっちり2時間ほど鍛練は続いた
「やっぱり今日は手強かった・・・」
「でもすごいさね、日本舞踊っていうんだろ?」
「へっ!?」
「その戦闘スタイル。」
「えっ・・・そうなってる!?別にそうしようとしてるわけじゃないんだけど・・・」
「じゃ無意識か、なんかスッゲー綺麗だった!ばあちゃんに教えてもらったんか?」
「え、あ、うん・・・なんか恥ずかしいな。確かにおばあちゃんに教わったものだよ。」
「か〜っこいい〜!」
はヘロヘロになりながらラビの元へと駆け寄った
「おい。」
「はい!」
「もっと剣の特性を生かせ。」
そのままヘタリと座り込むと、後ろから神田に今日のまとめのようにお言葉を頂戴した
それにはーいと間延びした返事を返すと、まだ神田はイライラしているのかチッと舌打ちをして先に修練場を出て行った
「俺らも戻ろうぜ。」
「うん!!!」
それに習い、2人も揃って修練場を後にした
その時、は無意識にラビの袖口を掴んだ
ラビは、それを拒まなかった
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2章は任務なしで書こうと思ってます。
果たしてネタが詰まらないか心配です。
(だったらちゃんと構想練ろうよ・・・)
あと、ヒロインにもトラウマを作りました。(笑)
2009 08 31
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