バタン!という音ともに閉まったドア
その前には、男が2人立っていた
「・・・。」
ブックマンが確かめるようにの名を呼ぶが、
対するは子供達の亡骸の前に立ったまま、その男達を見て言葉を失っていた
「現れたな、エクソシスト!」
すると左に立っている小太りな男が野太い声を荒げた
隣に立っている背の高い男は、と同じように突っ立ったままだ
「・・・お前達が、今回の誘拐犯だな?」
「ハハ、察しのとおりだ!」
小太りの男は意地悪そうに笑った
「子供達を誘拐した目的はなんじゃ?」
「AKUMAを・・・増やすため。」
「AKUMAをって・・・まさか!!!」
「察しがいいなエクソシスト、そうさ、この村の、そこの餓鬼どもの親だ。」
相変わらず小太りの男は意地悪そうな笑みを浮かべながら話を続ける
ラビとブックマンが徐々に前へと間合いを詰めているのにもお構いなしだ
「この村の親達・・・つまり、
子供が奇怪な誘拐事件に巻き込まれたショックで混乱している隙を狙って、ってやつか。」
「そうさ、子供が大事な親だからな、簡単に騙されたさ。
子供が帰ってくるから、名前を呼べってな。」
ラビとブックマンは黙った
AKUMAがどのようにして作られているのかは知っている
ダークマターで出来た特殊なボディに絆のある人間が名前を呼ぶと死んだものの魂が取り込まれ、
その拘束されてしまった魂が呼んだ人間の皮を被ってAKUMAとなる・・・
「誘拐された人間の親は、その子供の魂をまとったAKUMAの化けの皮ってことか。」
ラビが言った言葉にがハッとした
ならばあの館の主は・・・?
「あぁ、全員ってわけにもいかなかったけどな。」
だがその男が言ったことでまた少しホッとした
小さな村だ、この子供達と同じ数のAKUMAがいると思うとおぞましい
そんな時、今まで一言も喋らなかった背の高い男が不意に一歩前へと足を踏み出した
ラビとブックマンは前へ進むのを止め一歩後退すると、
その2人の間から意を決したようにが飛び出す
そしてその背の高い男をジッと見つめ、やがてポツリと呟いた
「・・・お、父さん・・・」
その時、一瞬だけ呼ばれた男はピクリと肩を揺らした
Spinning Dance ---10
「・・・お父さん、だよね?」
が恐る恐る訊ねても、その男は立ちどまったまま何も言おうとしない
「なんだ、エクソシストの父親だと!?」
その代わり、小太りな男の方が驚いたように声を荒げた
「この、レベル2にもなって自我が発達しない出来損ないのAKUMAの!?
なんだそれ、傑作だな!!!!」
そして、心底可笑しそうに腹を抱えて笑い出した
「自我が・・・ない・・・?」
「そうさ、こいつはレベル2にもなって自我がない可笑しなヤローなのさ。
まぁ、こいつの能力のおかげで誘拐はスムーズに出来たから、腕は確かだがな。」
そう言うや否や、背の高い男はバッと前へ飛び出した
3人が立っているところ目掛けて
「「!!!」」
「っ、鎌鼬!!!」
だが、ぶつかる瞬間にが手に持つ虹霞をバッと振り上げた
男の勢いと、の放った鎌鼬の勢いがぶつかりバーンとけたたましい音が鳴り響いた
「!」
「大丈夫よ、2人は!?」
「問題ない。」
急いでが振り返ると、ラビとブックマンは攻撃が当たってはいなかった
ホッとしたが前を見ると、そこには甲冑に身を包んだ、さっきが戦ったAKUMAが立っていた
「・・・お父さん・・・」
やはりあの時戦ったAKUMAは父親だったのだ
愕然と確信してしまった
そして当のAKUMAと化した父親は、先の戦いの時と同じく頑丈な甲冑のおかげで傷らしいものは見当たらない
「まぁ、エクソシストの親だろうがこいつはAKUMAだ。おい、そいつらを・・・殺れ!!!」
小太りの男はそう宣言するとサッと後ろの扉を開けて駆け出した
「待て!」
ラビが急いで追いかけようとすると、その前をの父親が立ちはだかる
「ちっ・・・」
ラビは戦う為に手に持っていた鉄槌を大きくさせる
が、それを振り上げる前にサッとが躍り出る
「!」
「ラビ、ブックマンとあの男を追って!」
「でも・・・」
「私なら、大丈夫だから!」
渋るラビには振り返って柔らかく笑った
「・・・自分のケリは、自分でつけなきゃ、ね。」
そう言って、未だに前に立ちはだかったまま動かない父親へと自ら駆け出した
「!」
「ラビ、の言うとおりここは任せるのじゃ。」
「でも・・・!」
「ラビ。」
尚も渋るラビをブックマンが諭すと
ラビは諦めたように達と距離をとって外へと出て行った
それを見送ったは虹霞をさっと振り上げた
だが繰り出した鎌鼬は甲冑により簡単に跳ね返されてしまう
「やっぱり、これだけじゃ限界か・・・」
は少しの間を取り止まった
それでもAKUMAは動こうとしない
「ねぇ、どうして私を殺そうとしないの?」
「・・・・・・」
「・・・娘だから?」
「・・・・・・」
「っ・・・そんなわけないよね、だってあなたは、私を・・・愛してないもんね!」
「エクソ・・・シスト・・・」
が顔を歪めて叫ぶと、AKUMAはボソリと呟いた
それは間違いなく、久しぶりに聞いた父親の声だった
「エクソシストは・・・コロス」
AKUMAはそう言うと拳銃の照準をに合わせ駆け出す
「っ、天衣!!!」
そして容赦なく撃ちつけてくる弾丸を、は床を蹴って跳び上がり避けていく
時にはそんなに高くない天井や側面に足をつけながらも虹霞を使って避けていく
ただただ、避けていく・・・
(私、迷ってる・・・?)
は果てしなく続く銃弾を雨を避けながら思考回路を巡らせた
(迷う・・・親だから?でも、私は・・・)
「死ね、エクソシスト。」
AKUMAは偶にそう呟きながら弾切れすることなく撃ち込む
(そう、私は・・・エクソシストだ!)
はタンと床に足をつけると
尚も撃ってくる銃弾を避けながら真っ直ぐにAKUMAに向かって駆け出した
「-----虹霞---第二開放---舞いの型・虹舞曲!」
が叫ぶと、虹霞はフワリと七色に光る
「------------赤!!」
そして、一気に赤く染まった
そして針金のように硬くなると剣の形に変わった
変形した虹霞をガッと振り下げると、AKUMAは拳銃ではなく固い甲冑に包まれた腕で迎えた
ガシャン!!!!!
金属同士がぶつかり合う音の後、ギシギシと擦れる音がするだけの沈黙した空間
それを突き破り、は間近にいる顔の見えない父親にむけて口を開けた
「・・・あなたは許さない。」
「・・・・・・」
「私のことなんてこの際どうでもいい。
けど、子供たちを・・・子供の親を酷い目に・・・!!」
「・・・・・・」
「ねぇ、子供たちをなくした親を罠に嵌めて、どう思った?
馬鹿だなって思った?あぁ、自我なんてないんだよね。
だったら罠に嵌めたのはもう1人の男なの?
ねぇ、そんな親の気持ち、あなたにはわからないよね。
父親失格だもの、お母さんと同じ!!!!」
そう叫ぶとAKUMAはピクリと反応し、ガッと剣を無理やり払うとそのままの鳩尾を殴りつけた
「カッ・・・!」
その力もあまりに強く、は後ろの方へと吹っ飛び壁に打ち付けられる
「うぅ・・・」
はヨロヨロと起き上がろうとするが、それを許さないようにAKUMAが間を詰め殴ってくる
「うあっ!」
拳銃なんて必要ないというようにそれは後ろに放り投げられ、AKUMAは顔面を含む体中を殴ってくる
「うっ・・・は!」
は虹霞を手に持ってはいるものの、次々と殴られ身動きがとれない
AKUMAは容赦なんてしてこない
「うっ・・・怒ってるの?」
だが、がそう言うとAKUMAは突然ピタリと殴るのを止めた
だがは体中を殴られていたので腕を、虹霞を振り上げることが出来ない
それでも瞳を真っ直ぐにAKUMAへ向ける
「怒ってるからこうやって殴るんだよね・・・
あの時と一緒だ・・・私を・・・捨てた時と・・・」
AKUMAは今度は殴らず、ただ黙ってを見据える
「わかってるよ・・・その中にある魂はお母さんなんでしょ?
お父さんがそうまでして大切にしてきたのは、お母さんだけだもんね・・・」
ピクリと反応はするが、それでも殴ってこない
「・・・私を捨てた時もそうだった・・・殴ったのはお父さん。
お母さんは傍でそれを見てるだけ。
あなた達は・・・そうやって私を捨てた・・・
随分と最低なことだって今でも思ってるよ・・・なのに、あなた達は・・・」
はふと、ゴミのように放置されている子供たちの亡骸を見つめ、再びAKUMAに目線を戻す
「こうして今、更に最低なことをしているんだ・・・!!!」
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あー・・・ちょっとおかしいかな?
まぁ、ちょっとずつリズムを取り戻そう・・・。。。
2009 03 19
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