「各場所に各隊が配置を完了したと連絡があった。」



 土方は一番のヤマを張っている宿の前にいる。
 沖田率いる一番隊もここの配置だ。




「一気に叩くぞ。
 大物がいなくても構わねー、とにかく攘夷派を一匹も逃がすな!!」








 すでに攘夷派がいることは確定している。
 あとは誰も逃がすことなく捕まえること・・・それが真選組の役目なのだ。












「・・・今日は暗いですねぃ。」

 その時、沖田がポツリとそんなことを呟いた。


「あぁ、今日は運が悪いことに新月だ。
 月明かりがないのは、少々厄介だな。」



 沖田は空を見上げた。
 星は瞬いている。
 だが、月が・・・見えない。



















 弐 ---新月の夜---
















「・・・月がない。」



「あぁ、今日は新月だからな。
 ったく、月見酒にもなりゃしねー。」



 屯所にいる銀時とは、廊下に出ていた。
 は相変わらず正座しているが、銀時は胡坐をかいて呑気に酒を飲んでいる。





「銀、お酒飲んだら駄目だよ。」


「大丈夫だって!」



「・・・帰ってきたら土方さんに怒られる。」


「多串くんなら心配いらないよー、銀さん負けないから。」




「・・・そういう問題じゃないと思う。」


は心配性だねー。」


 既にほろ酔いなのか、銀時はよしよしとの頭を撫でた。








「・・・もう酔ってる。」



「ん〜気のせいだよ〜?」



「・・・駄目だと思うんだけどな・・・」




「そんな心配しすぎ!
 んな毎回言われたら銀さんだってやんなっちゃうよ〜?」



「毎回?」



「え?あ〜・・・これから会うたんびにってこと!!」






「会う度にお酒飲むんだ・・・」




 がボソッと言ったのを聞き取った銀時は、
 すでに寝転がっていたところから起き上がり、再び胡坐をかいた。


「わかったよーに免じて今回はこれで終わり!」


「そう、よかった。」







 銀時はちぇっと言うと、酒ビンを廊下の軒下にポイッと投げ込んだ。


「・・・だからって投げ込むの・・・」



はツッコミ体質ですか!?
 これ一応そこの台所からくすねてきたヤツだからね、証拠隠滅!」



 先程フラリと出て行って持ってきたと思ったが、
 やはり盗んできたものらしい。




「宴会の時にバレる。」


「・・・・・・今度こっそり買ってくるから、
 そしたらが台所に戻してよ。」


「私?」



「駄目なわけ?」



「・・・私、そういうところに入らせてくれないから。」



「は?」



「基本は部屋から出られないから。
 近藤さんに手伝いを頼まれても部屋で出来ることだし、
 見送りもさせてもらえなかった・・・」



 銀時は顔を顰めた。






「なんでこんな中途半端な軟禁状態にしてんだよ、
 あのクソヤローどもは。」


「私、疑われてるから。」



「だったらなんでこんなとこにがいるんだよ。
 普通尋問とかして、違うとこにいるんじゃねーの?」


 少々怒ったように銀時が言うと、
 は俯いてしまった。
 銀時はマズイ、と思ったらしく、

「別にを牢屋に入れろって言ってるわけじゃねー。」

 と慌てて弁解した。




「むしろ牢屋なんかに入れたらブチ切れるな。
 だが、いかんせん扱いが曖昧すぎるだろう・・・それじゃぁも大変に決まってる。」



「・・・そんなことないよ。
 ご飯も寝る場所もくれるもの・・・」





 また膝に置いてある手がぎゅっと握られた。
 その姿は、あまりにも痛々しい。



。」


「・・・なに?」




「疑いが晴れてここを出て行くことになったら、ウチに来い。」


 銀時が静かにそう告げると、がバッと顔を上げた。
 驚いた顔をしている。





「・・・え?」


「行くとこなら俺が作ってやるよ。」



「で、も・・・」



「心配はいらねーよ。
 ま、少々やんちゃなチャイナ娘と、影の薄い従業員がいるけどな。」



「チャイナ・・・影が薄い???」




「ようするに居候が一人増えたって問題ないんだよ。」



 でも、とは困ったような顔をしている。
 無理もないか、と思った銀時はそれ以上は無理強いしなかった。




「ま、それは事が済んだら決めればいいさ。」




 そういって銀時は再びよっこらせと寝転がり、
 の方に向いて肩肘をついた。







「・・・銀。」



「あ、なんだ?」





「なんで今日会ったばかりなのに、そんなに優しくしてくれるの?」



 がそう問いかけると、銀時はあーと数秒考え、






「・・・似たもの同士だから、だな。
 詳しいことは、秘密〜。」


 そう言った。
 は銀時の目をジーッと見る。
 その目はまるで死んだ魚のようで、なんとなく、の目と似ていた。











「・・・私と銀は似たもの同士なの?」



「そうだな・・・」




 はまだ銀時の目を見つめている。



「・・・銀は、私のこと知ってる?」


「まさか。」



 そうだよね。
 そう言っては寒いからと言って部屋に入り、
 明かりをつけようと蝋燭を探し出した。






 それを廊下で寝転がったままの銀時が見ていた。


「・・・、か・・・」




 その姿は歳相応の少女で、
 どうしてこんな大変な目にあっているのだろうと心の中で思った。



「・・・こりゃぁあいつに言うしかないっか・・・」




「なにか言った銀?」







「いや、なんでもねーよ。」















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あっかーん!!!総悟くんカンバーック!!!!



 2008 12 01


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