「これじゃぁどうしようもないよなー。」
と、近藤。
「なんでこんな奴連れてきたんだよめんどくせー。」
と、土方。
「うるせー土方コノヤロー。」
と、沖田。
「・・・すみま、せん。私、帰りますから。」
と、。
病院から帰ってきて初めて自分から言葉を発した。
しかし、どこかやっぱり虚ろだった。
目線の先のものが、映っていない。
「帰るって、どこにですかぃ?」
「・・・」
「帰る場所なんて、ないでしょーが。」
「・・・・・・で、も・・・」
壱 ---孤独に浮かぶ---
「総悟の言うとおりだ。
記憶もなくて家もなくてじゃ、危ないだろう?」
「それにまだ疑いが晴れたわけじゃねー。
迂闊に外へ出すわけにもいかねーんだよ、ったくめんどくせー。」
近藤は優しく言うが、
土方はやはりまだ疑っているらしい。
そのこともあって、やはり帰すべきではないという結論だ。
「トシ、記憶がない子にスパイなんて出来るわけないだろう!」
「医者の話じゃここ最近の記憶はあるんだ。
記憶喪失に漬け込んで、
攘夷派が送り込んだという筋も無きにしも非ずだ。」
「そ、そうかもしれないが・・・」
近藤と土方は同時にため息を吐いた。
正直こんなことが起きたのは初めてだし、
が記憶喪失であることが確かなことなので、
さらに厄介である。
「心配いりやせんぜ、近藤さんに土方さん。」
「どうする気だ、総悟。」
「この子をここで住まわせばいいんでさぁ。」
「はぁっ!?」
「っ・・・!」
思わず怒鳴り声にも似た声を土方が上げると、
の肩がビクッと跳ね上がった。
やはりまだ怖いらしい。
「なに考えてやがる、馬鹿かお前は!!」
「馬鹿はどっちでさぁ。
俺は頭を回して考えただけですぜ?」
「そ、総悟、どういう意味だ?」
土方がありえない、と言って怒鳴る横で近藤は焦った顔をした。
さぱり理解出来ないらしい。
「記憶がないのは医者のお墨付き。
だからってそれが疑いを晴らす理由にはならない。
だったらここに住み込んでもらって監視でもしたらいいじゃないですか。
家だってないんだし、彼女にとってもいいことでしょ。
それで記憶が戻ったら万々歳。」
はい決定ーーー。
と言いながら沖田はまたの腕を持って部屋を出ようとする。
「おい、総悟!」
「なにかご不満が?」
土方が止めるが、沖田はお構いなし。
むしろ反対意見があるなら言ってみろ、
と言わんばかりに不敵に笑った。
「・・・ま、まぁこれが最善の策、かな・・・」
と近藤が言ってしまっては、最早どうしようもない。
元々近藤は優しい性格だから、
彼女を保護する、というような名目にもとれるこの案を反対するはずがない。
沖田の勝ちだ。
「そいじゃま、今日はもう遅いんでおやすみなせー。」
「ちょちょ、でも総悟くん!?
ちゃんの部屋とかどうするの!?
てゆーか全体的に展開が早すぎるよ!!!」
「明日用意するとして、今日は俺んとこでいいでしょ?
ちゃんと監視しまさぁ。」
んじゃ、と言ってを連れて出て行った。
「・・・これでいいよな、トシ?」
「・・・総悟の言うことも一理ある。
まぁ、いずれあいつの正体暴き出しゃぁいいことだ。」
「あの・・・本当にいいんですか?」
「なにか問題でも?」
「・・・」
言い返してこないを見て、沖田は立ち止まった。
外はすっかり暗くなっていて、
さっきの雨もすっかり上がり、月明かりが廊下に差し込む。
「・・・そうですよね、監視できるんですから・・・
私も、ここに住む、し・・・問題なんて・・・」
そう言っては俯いた。
「・・・言っとくけど、
あれは土方さんと近藤さんを説き伏せるために言ったまででさぁ。
まぁ、完全にでっち上げってわけにもいかねーがねぃ。」
気にすんなぁ、と言うとが顔を上げた。
沖田をジッと見てから、ふと空を仰いだ。
雨雲の隙間から月が見え隠れしている。
その月を見る目は、さっきまで人を見ている虚ろな目と違って、
初めて感情が入った目だった。
「そうですね・・・私、月だから・・・大丈夫、です。」
「・・・月?」
「空に独りぼっちで浮かんでる、月。
周りの雲とも、星とも違って、いつも独りだから・・・
ここにいても、みんなと違うって・・・わかってますから。」
疑いが晴れたら、ちゃんと出て行きます。
そう言ったの目は・・・・・・今にも泣きそうだった。
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は、話が上手くまとまらない・・・
思ってたよりも難しいな・・・
頭の中では出来てるんだけど。。。
2008 11 10
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