「いたいた、総悟!!」
「テメー勝手にパトカー使うんじゃねーよ!!!」
あれから近藤と土方が沖田達に追いついたのは、
結局警察病院の中。
何故か物凄い速さで沖田達は病院に着いていたのだ。
どうやらパトカーを使ったらしい。
「あれ、ちゃんは?」
しかし、そこにいるのは沖田一人だった。
「まさかテメー逃げられたんじゃ!」
「馬鹿ですかい土方さん。
今検査中でさぁ。」
「はやっ!!!!!!」
壱 ---身元不明---
あっさりと検査室にを放り込んだ沖田は、
呑気に奇妙な目がプリントされたアイマスクを装着して
備え付けのベンチで寝ている。
「・・・たく、一体なんなんだよ。」
あーもーと土方はイライラしながら頭を掻き毟った。
「だが総悟の言うとおりだ。
医者がきちんと診断して、
それからあの子の今後を検討すればいいだろ?」
土方は納得してないようだが、
黙って沖田の隣りにドカッと座った。
沖田の行動も、近藤の言ってることも、
何も間違ったことではないからだ。
だが、警戒心を解いたわけではない。
誰かが意味もなく真選組を尋ねてくるほど、
今は平和なご時勢じゃない・・・もしかしたら、攘夷派なのかもしれない。
と、考えに耽っていると、
ガーーー
という音とともに看護師が出てきた。
お入り下さい、と単調に言う。
そこで三人(いつの間にか沖田も起きている)は診察室に入った。
そこにはいつもお世話になっている医者と、
その前に黙って座っているがいた。
「どうも、わざわざありがとうございます。
で、どうでしたか?」
近藤が医者に聞くと、
医者は一呼吸おいてゆっくりと話し始めた。
「単刀直入に申し上げます。
彼女にはここ数年の記憶しか残っていません。」
「・・・残ってないだぁ?」
土方が怪訝そうに言った。
「はい。
この様なケースは私も初めてですのではっきりとは言えませんが、
彼女はおそらく、日々の中で徐々に記憶をなくしていったのでしょう。
まるで道端に落としていくかのように。」
近藤が心配そうにを見ると、
はやはり無表情でどこも見ていないように、黙って座っていた。
「名前を覚えていたのは奇跡なのでしょうかね。」
「そりゃー痴呆症とかじゃなくてか?」
「はい。それとおそらく、記憶は戻らないでしょう。」
その言葉に一同が驚いた。
「なんで戻らないんですかぃ?」
「詳しいことがわからず、大変申し訳ありませんが。」
そう言って医者はをチラリと見た。
「先ほど、細かく彼女に質問をしてみたところ、
酷い拒絶反応を起こしました。
おそらく、よほど思い出したくないものなのでしょう。
そういう場合、普通の記憶喪失者でも記憶を取り戻すのは難しいものです。」
「だ、そうですぜ、土方さんよぉ。」
沖田が土方を見てそう言った。
土方は小さく舌打ちしただけで、特になにも言わなかった。
「まぁまぁ!
とにかく先生、ありがとうございました!」
とりあえず近藤がお礼を言い、
ひとまず屯所へ帰ることにした。
もちろん、も一緒に。
さて、これからどうするか、だ。
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わたくし、医学的知識は皆無に等しいです。
ここで出た症例は、
あくまで小説をスムーズに進めるために
自分ででっち上げたもの、と解釈下さい。
それが嫌だ、と言われてもぶっちゃけ困る・・・(笑)
2008 11 07
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