「おい、なんでこんな得体の知らねーやつ連れてくるんだよ。」
中に少女を入れると、案の定この男が苦言を呈した。
「うるせー土方コノヤロー。」
「テメーはそれしか言えねーのかよ。」
真選組副長、土方だ。
「まぁまぁ、いいじゃないかトシ。
この子このままじゃ風邪引いちゃうんだし!」
それと打って変わって局長の近藤は快く受け入れてくれた。
今、少女は沖田を含めこの三人に囲まれるように
布団で眠っている。
「駄目だ近藤さん、
ひょっとしたら攘夷派のスパイかも知れねーのに。」
「トシ、お前は厳しすぎるぞ。」
「近藤さんが優しすぎるんだ。」
「うるせーな、起きちゃったらどうすんでぃ土方さんよー。」
「オメーもいっぺん黙れや・・・」
土方が腰に差している刀に手をかけると、
沖田も刀に手を伸ばす。
「コラお前ら!!
この子が起きちゃうじゃないか、やめろ!!!」
「んっ・・・」
「あ。」
「近藤さん、声が大きいでさぁ。」
壱 ---虚ろ---
もぞりと動いたと思うと、
ゆっくりと少女が目を覚ました。
「おいテメー、何者だ。」
「・・・」
声を投げかけた土方、
黙って心配そうな顔をしている近藤、
無表情で見つめる沖田を順番に見た少女は、
それでもなにも言わなかった。
「トシ、そんな言い方じゃ何も言わないだろ。
君、どこから来たの?」
土方を制し、今度は近藤が聞くが、
やはり少女は黙ったまま、
ただ起き上がるだけだった。
「・・・あれ?」
「おい、名前はなんて言うんでぃ?」
沖田が聞くと、
少女は黙って沖田を見つめ、
「・・・」
やがてゆっくりと喋った。
初めて聞いた少女、の声は、
やっぱり幼さが少し残っていた。
本当に沖田と同い年かもしれない。
「君、歳は?」
もう一度近藤が聞いてみるが、やはり何も言わない。
「・・・総悟じゃないと喋れないのかな?」
「んなことあるわけ・・・」
無視(?)されて少ししょ気てる近藤を
土方はやれやれと言った感じで宥める。
だが、本当には何も言わずに、
何度も不思議そうに部屋を見渡していた。
「そ、総悟・・・聞いてくれないか?」
「・・・おい、オメー歳は?」
「・・・知らない。」
しかしやっぱり沖田が聞くと答えた。
しかしちゃんとこちらを向いてはいるが、
やはりその瞳には何も映っていないように感じる。
「・・・住所は?」
「・・・知らない。」
「じゃぁ今までどこにいたんでぃ?」
「・・・知らない。いろんな路地裏。」
「いつから?」
「・・・日付なんて数えてない。」
「・・・オメー、名前以外になんか知ってることは?」
その質問にだけは答えなかった。
ただ俯き、震えながら首を横に振っただけだった。
「ハッ、んなもんどうせ適当な嘘だろ。
スパイかも知らねーんだから、普通に尋問すりゃ吐くだろ。」
そう言い捨てる土方に、
は肩をビクリと震わせて思わず顔を上げた。
「・・・言いたいことがあるんなら言えよ。」
しかし土方は相変わらずを睨みつけていた。
「そんなこと言えば誰だって怯えるだろうトシ!」
あまりの嫌悪ぶりに思わず近藤が止めに入る。
「近藤さん、その優しさは見ず知らずの女には無用だ。
大方、記憶喪失だって訴えて中に入り込もうとしてるんだ。」
「トシ!!
本当かもしれないんだぞ!」
「俺だったらもっとマシな嘘をつくがな。」
だが、土方は尚も睨むことを止めない。
はそれを震えながら、
それでも土方を虚ろな目で見つめていた。
「土方さんよぉ、そんなに信じられないなら良い方法がありまさぁ。」
それまで近藤と土方のやり取りを黙って聞いていた沖田が
すっと立ち上がった。
なぜかも立たせている。
もわけがわからないという表情だ。
「なんだ?」
「記憶喪失って言うなら、病院で診てもらえばいいんでさぁ。」
「おまえなぁ〜」
沖田の発言に呆れたように呟く土方をよそに、
そのままを連れて部屋を出ようとする。
「おい、総悟!!」
「心配いりやせんぜ近藤さん。
こいつを逃がすわけじゃねー、
土方の野郎を納得させるだけでさぁ。」
そう言ってあっさりと部屋を出て行った。
「ったく、何考えてんだあの馬鹿は!!」
「トシが疑い過ぎだからじゃないのか?」
「・・・俺は真選組として当然のことをしたまでだ。」
それを追うように近藤と土方も部屋を出た。
「あ、の・・・なんで・・・?」
腕を掴まれ引っ張られるようにぐんぐんと廊下を突き進む。
「なんで・・・あ、の・・・」
「・・・別に、土方の野郎を納得させるって言ってんでぃ。」
そう言ってぐんぐんと進んだ。
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ペース(?)が掴めない・・・
難しい・・・。。。
2008 11 06
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