松平が突然、銀時と一対一で話をすると言いだしそのまま出て行ってから一時間が過ぎた。








 会議室に取り残された近藤・土方・総悟・は、何を言うまでもなくずっと黙っていた。

























 参 ---自分---

























「・・・あぁ、その、だな。」



 すると、この空気に一番最初に耐えかねた近藤が気まずそうに声を上げた。





「・・・・・・ごめんな、ちゃん。」

 そう言うと、言われたは困ったように近藤を見返した。



「・・・銀が言ったこと、気にしてますか?」

「うぁっ・・・えっと・・・まぁ、そうなんだが・・・」


 銀時が言った言葉を真っ先に受け止め反省していたのだ。
 本当に優しい人なんだから、と、総悟はボンヤリと思った。

 そして当のはと言うと、そのことを受け止めるようにきちんと座りなおした。



「・・・謝らないでください。」

「けど・・・」


「・・・前に、同じことを言われたんです・・・銀に・・・みなさんが出払っていた新月の夜・・・でも私、そうは思っていません。
 たとえ疑われていたって・・・苦しさしかなかった前の生活に比べたら、本当に良くして貰ってます・・・。」

ちゃん・・・」




「だから謝らないでください。私は、大丈夫です。」



 そう言い切ったの顔は、無表情だけれど、どこか芯を持っていた。








「・・・そっか・・・」




 それを見て、近藤は安心したように微笑んだ。



「・・・じゃぁ、聞くけど、ちゃんは本当はどうしたいんだ?」




「------っ・・・」

 だが、その笑顔のまま優しく問いかけると、はあからさまに肩をビクリと震わせ急に俯いてしまった。




「・・・ちゃん?どうかしっ・・・」

 いきなりの変化に戸惑った近藤が顔を覗き込もうとするが、それは土方によって止められてしまった。


「・・・トシ?」

 土方はただ近藤を止め、何も言わずに首を横に振った。








 その行動はあまりに土方らしくない、そう思ったのは近藤も、総悟も同じだった。



 あれだけをある意味ぞんざいに扱っていた土方にしては非常にらしくない行動だ。
 それの真意は恐らく聞いても答えてはくれないだろう・・・


 だが、総悟には少々引っかかるものがあった。




 つい数刻前、が目覚めた時に言った言葉

「・・・どうして倒れたかは、わからないの。
 でも、私、土方さんにどうしたい?って聞かれて、すごく、怖かった・・・」



 それに、松平と会話した時も、どうなんだ?と聞かれると先ほど同様肩を震わせて俯いた。








 自分の意見を求められることに、あからさまな恐怖を抱いているらしい。






 そう結論付けた総悟だが、あながち間違ってはいないだろうと踏んでいる。

 今までにの意見を聞いたことは何度となくあったが、その時とはあきらかに様子が違うのだ。
 倒れる寸前に交わした土方との会話で、きっと何かがの心に引っかかった。


 そしてそれは、記憶に繋がるところ・・・?















 ガラッ


「「「「!!!」」」」


 そう考え込んでいると、部屋の障子が勢いよく開いて皆一斉にそちらを振り向いた。




「お〜またせ〜!」

 そこには話をつけてきたらしい松平と銀時の姿があった。
 松平は相変わらずふてぶてしく葉巻をプカプカと吸い、
 銀時もいつものように何を考えているのかわからない表情でその隣に立っている。






「悪いな、待たせちまってよぉ?」


「・・・いえ、そんなことは・・・」


 に言葉を掛けつつ元の席にドッカリと座り込むと、松平は葉巻をポイッと捨てた。
 (もちろん土方が拾ってゴミ箱に入れた。)






「んでまぁ結論から言うと、だ。」





 そう言うと、だけではなく近藤や土方、総悟も顔を引き締めた。
 ただ銀時だけはメンドくさそうに欠伸をしながら元の定位置に戻っているが・・・


















はこれからも屯所で預かることにした。」












 そう言った瞬間、が一瞬だけ銀時を見たのを総悟は見落とさなかった。









「・・・預かるって、とっつぁん、それはつまり・・・?」



「まあ今と同じであの部屋に住むってことだ。
 ただし、もうを調べる必要はねぇ、普通に扱え。」

「とっつぁんそれはどうして・・・!!」


「どうしてだぁ?上司からの命令だからだトシ。」


「なっ・・・」

 もう調べるな、と暗に言われたような言葉に土方は思わず絶句した。
 いくら普段から理不尽な事をするこの男も、立派な幕府の役人のハズなのに・・・




「・・・納得する理由を言ってください。」


「そりゃぁ、無理だ。」

「何故です!!」

「今のお前じゃ、何を言っても納得しねぇよ。」

「はぁ!?」


「とにかくー!これはもう俺様が決めたことだからな決定事項なんだよ!
 はこれからもここで住む、もちろん簡単な手伝いでもさせてやれよ手持ち無沙汰じゃ忍びねぇ。
 流石に外を歩く時は隊士の一人でも着けろよ、けど屯所内くらい自由に歩かせてやれ!!」



 はいけってーい!

 と言う松平に、トシはガックリと頭を抱え、近藤はわけがわかっていないのかポカーンとしている。
 総悟と銀時は何を考えているのか無表情のまま。

 当のは、ただ松平を見つめていた。






「・・・何か言いてぇか、?」



「・・・・・・いえ、何も。」



「考えがあるなら「ないって言ってんだからいいんじゃない?」




 松平が促しても、は首を振るだけで逆に銀時がそれを制した。



「んじゃ俺はこれで帰りますかね〜。」

「銀・・・」

「んじゃ、もうこの中は出歩いていいって言ってんだから、見送りしてくれ。」


「・・・え?」

 そしてそのまま立ち上がった銀時にが呼びかけると、一緒にそこまで、と言われ困ってしまった。
 確かに今の話ではもうこの屯所内ならば出歩いていいとなっているが、それは松平と・・・恐らく銀時が決めたことだ。
 けれど、ここでの実質上の責任者は・・・





「・・・まぁ、うん、入り口までなら行っておいで。」



 困ったように、それでもどこかホッとしたように優しく笑ってくれる近藤である。
 その近藤がいいといったので、は数秒思案したように見えた後、ゆっくりと立ち上がった。






「んじゃまぁ皆さん、ごゆっくり。」


 銀時は部屋にいる近藤達を見回すと、を連れてゆっくりと部屋を出た。













「・・・とっつぁん、」

「なんだトシ?」

「・・・どうしても理由は言えないんですか?それとも、理由らしい理由じゃないってんですか?」


「・・・まーだ疑ってんのか、メンドウなヤツだなぁ近藤?」

「え!?俺!?」


 そして残ってしまった真選組一同。(と、松平。)





「とっつぁんは、」

 と、そんな中、今まで一言も言わずに黙って事の成り行きを見ていた総悟が口を開いた。


「・・・とっつぁんは、を知ってるんですかぃ?」


「ん〜?」


「そんな気がしてるんでさぁ。」

「確かに・・・どうなんですかとっつぁん!」

 先ほどの決定事項は、なんとなく、どことなくだがを擁護しているようにも見えた。
 は記憶がないので知らないのも当然だが、もし松平とが面識があるのなら・・・


「あったら理由も話せるんじゃねーのか?」


 だが、総悟やそれに便乗した近藤の問いは松平ではなく、土方が答えた。
 そのおかげで総悟が一瞬にして睨みつけたが、土方は気にしないように煙草を取り出した。













「・・・まぁ、とりあえず見守ってやれ。」




 そして松平はポツリとそう呟いた。




「・・・・・・俺が言えるのは、そこまでだ。」























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四ヶ月ぶりの更新である。
申し訳なさ過ぎである。



 2009 12 13


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