馬鹿な女だった
最初から最後まで
全部
「おい、とっとと失せろ、目障りだ。」
「え、あの・・・助けてくれて、あり」
「礼なんて言ってる暇があったら失せろって言ってんだ、聞こえねーのか!」
「っ・・・」
あいつの為に殺ったわけじゃなかったのに
ただ俺の目の前で男が二・三人うろついているのが邪魔で
切ってやった・・・それだけだったはずだ
なのに
「私、と言います!
あ、の、ついていってもいいですか!?」
「あぁ?」
「じ、邪魔はしません。
なんなら身の回りのお手伝いでもしますから、だからっ・・・」
そんなことを言い出すから、首元に刀を突きつけ、
失せろ。と一言いった。
なのに
「わ、たしに帰る場所はありません。
だから、それが駄目なら、ここで殺してください!!!」
本当に------
「で、連れてきたんでござるか?
そりゃまた、珍しいことがあるもんでござるなー。」
そう言って万斉は、後ろでまた子と話をしている少女を見た。
「うるせー、あいつの運命を俺が決めるのが面倒だっただけだ。」
要は、あいつのために刀を汚すのが面倒だった、それだけだ。
「どのみち、決めていることになってるとは思わんのか・・・」
そう言った万斉の言葉は、三味線を弾いて聞き流した。
「高杉さん、何か食べたいものとかあります?
今からまた子さんと買い物に行ってくるんですが・・・?」
結局、あいつは俺達のところに居座るように過ごしていた。
と言っても、率先していろんな事をしようとしていたが・・・
「・・・高杉さん?」
「、こやつは何でもいいんでござるよ。
それより、おでんが食べたいんでござるが。」
「あ、はい。じゃぁおでん買ってきますね!」
そう言って部屋を出ようとした時、
ふとこっちを見た。
なにか言うわけもない、あんな奴に。
わかっているだろう、もうここにきて一月になるのだから。
馬鹿な女だ
「、どうして晋助様のところにいるッスか?」
「え?」
「そう言えば聞いてなかったッス。」
「あぁ・・・」
あいつは少し考えて
「居場所が・・・ほしかったから、私・・・家族も家もないし。
それが叶わないなら・・・そのまま死のうって思ってた。
高杉さんが、私なんかの為に刀を抜く必要を見出さなかっただけだって、
わかってるんだけどね・・・それに甘えちゃった。」
「へ〜、それだけ?」
「え?」
「本当はまだなんかあるんじゃないッスか?」
「・・・フフ、そうだなー・・・
一目惚れでもしちゃったのかな・・・
だから傍にいたかったのかも。」
「じゃぁ今は傍にいられるんだから、幸せッスか?」
「・・・そうだね。
強いて言えば、一回くらい名前で呼んでほしいなー。」
いつも・・・おい、とかだからさ。
そう言って笑っていたらしい。
後からまた子に聞いて、益々あいつは馬鹿だと思った。
「奇襲?」
「えぇ、なんでも穏健派の端くれどもが、
束になってここの周りを囲ってるらしいですよ。
桂が関わっているとの情報はありません。」
そう言っていたのは恐らく武市だ。
「・・・確かにヅラは、こんな馬鹿げたことはしねぇな。」
今日は確か、あいつがきて半年経ったくらいだ。
「我等五人しかいないとわかっているのでござるか?」
「きっと晋助様がいるってことしかわかってないんじゃないッスか?」
「そうでしょうね。」
「・・・はっ、んなもんどーでもいいんだよ。
来るんなら、たたっ斬るまでだ。」
そう言って刀に手を沿え立ち上がると、
目の前に座っているあいつは、怯えていた。
奇襲がかかることは今までなかったから、
あいつにとっては初めての危機、ってやつだ。
「、お前は押入れに隠れていなさい。
終わったら呼ぶから、それまで決して出てくるのではないぞ?」
そう武市が言うと、
あいつは震えながら頷いた。
居場所がないなら死のう、そう言った奴だとは到底思えない。
外が騒がしくなった。
いよいよ来るのだろう。
そんな時に、あいつと目があった。
さっきの震えはもうなく、しっかりとした目でこっちを見ていた。
「・・・邪魔だ、出てくんじゃねーぞ。」
いつもならなにも言わないところなのに、
今回声をかけたのは・・・たまたまだ。
「っ、はい!」
あいつは勢い良く返事をすると、奥へと消えていった。
なぁ、邪魔だ、って言っただろう
出てくるなと言っただろう
やっぱりあいつは馬鹿だった
「高杉さん!!!」
その叫び声が聞こえたのは、
俺がいっぺんに六人相手だった時。
雑魚が考えそうな、数うちゃ当たる、なんだろうな。
ちょうど五人を切り捨てた瞬間、
残りの奴に後ろで間合いを取られた時に、聞こえた。
振り返った時に見えたのは、綺麗な赤だった。
「大方、片付いたでござるよ。」
「あぁ。」
「恐らく真選組辺りがもうすぐ聞きつけてくる頃じゃろう。
どうするでござるか?」
「決まってんだろ、来る前に場所を移す。」
「・・・は、どうするでござる・・・」
万斉はそういって、高杉の前に横たわる少女を見つめた。
背中から出た赤い血が、畳を染める。
「どうもねぇ、死体持って歩く奴がどこにいんだよ。」
万斉はその後になにも言わず、ただ黙って手を合わせ、部屋を出た。
他の奴らも、いつの間にかいない。
本当に馬鹿な女だ
最初から最後まで
全部
『高杉さん、お芋もらってきたんです、食べますか?』
『高杉さん、万斉さんがお呼びですよ?』
『高杉さん、三味線がお上手ですね、羨ましいなー。』
よく笑う奴だった
本当に、馬鹿みたいによく笑っていた
『高杉さん、ここに置いてくれて、ありがとうございます。
知ってます、どうして殺さなかったのかは。
でも・・・ありがとうございます。』
『・・・高杉さん、名前で呼んで・・・くれませんかね。』
「・・・・・・・・・・・・。」
ほら、やっぱり馬鹿な女じゃねーか
人が名前で呼んでやってるって言うのに
起きて笑いもしねー
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鬼兵隊の面々の喋り方がよくわかりませんでした。
やっぱりコミック買うべきだ・・・
2008 11 16