「なぁ・・・」
























 真っ赤、ではなく






 黒味を帯びた

 独特の赤







 ・・・血の赤、に塗れて、その人は立ち尽くしていた。





















「なぁ・・・」





「な、に?」









 周りにはたくさんの天人の亡き骸がごろごろと転がっている。


 その真ん中に、その人は血の赤に塗れて立っている。





「なぁ・・・。」


「だからなに、銀時?」



 白夜叉、と異名までもつその男は、
 いつも白い装束を血に染めて戦う。
 それを、いつも見ていた。






「なんでずっとそこにいるわけ?」


 その彼が亡き骸の真ん中に立っているのに対し、
 はその輪から離れたところに立っている。




「・・・なんでだろ。」


「こっち、来たくないわけ?」




「・・・そうなのかなー・・・」



 あははは、と乾いた笑いをこぼし、
 ゆっくりと銀時の傍に歩み寄った。
 だが彼の前は散々言ったように亡き骸だらけで、
 上手く進めない。









「転ぶなよ、折角の着物が汚れるぞ。」





 私はいつも見ているだけで
 戦い自体に参加したことはない。

 もちろん邪魔にならないように遠くから見ているし、
 万が一危機が迫っても、銀時を初め、ヅラや高杉、坂本達が守ってくれる。



 みんなが血塗れで帰ってくるのに
 私はいつも血の一滴もついていない綺麗な着物で迎える。







「わっ!」


 あと少しで銀時の元に辿りつく、という時になにかが足に引っかかり
 前のめりに倒れこむ。




「っ・・・ありがと・・・」


「ったく、ほんとに危なっかしいったらありゃしない!」

 しかし、地面には倒れこまずに
 そのまま銀時の胸にすっぽりと収まった。




「怪我は?」


「大丈夫だよ。」


 そのまま銀時の背中に腕を回すと、
 銀時も自分の腕の力を強めた。











 しばらく銀時に体を預けた。
 そして、ゆっくりとさっき引っかかったものを見た。




 案の定、死骸。


 ただそれは天人ではなく、人だった。
 顔は潰れて判別が出来ないが、おそらく一度は話したことがあるのだろう。
 よく目を凝らして周りを見渡せば、
 ちらほらと天人に紛れて人間の死骸も転がっている。





「・・・また誰か、死んじゃったんだね・・・。」



「いつものことだろ。それに天人は全滅だ。」


 そう呟く銀時の顔を、じっと見た。

 死んだ魚の目

 と称されるその目は、先ほどののようにあたりを見渡している。








「・・・ん?どうかした?」


 だが、が見つめているのに気づくと
 同じように見つめ返してきた。




 その目は少しだけ、優しく笑っているようで
















 あぁ、駄目だ





 と、漠然と思った。












「・・・なぁ」



「な、に?」
















「なんで泣いてるんだよ。」




 そう思ったら、泣かずにはいられなかった。








「あれ、なんでだろ・・・」


 ゴシゴシと目を擦っても、涙はとめどなく溢れ出てくる。





「っ・・・」



「おいおい、なんでお前が泣いてるんだよ〜!」


 銀時はやれやれと言った感じに再びを胸に収めた。






 の涙が、
 白い装束についている血の赤に染みこんでいく。


、なんでお前が泣いてるわけ?」







「っ・・・きっと、銀時が泣かないからだよ。」



 だから代わりに泣いてあげる



 そう言って、再び背中に回している腕に力を込めた。











「・・・そりゃどうも。」











 そうやって、君色が染みこむ    








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やべー、攘夷派時代の銀さん、ツボ(笑)



 2008 11 07