「さ、さ、さみぃぃぃぃぃぃぃいいいい!!!!」









 両手で体をめいっぱい抱きしめて寒さを紛らわそうとするが、どうしたって無理だ。
 頭上に屋根があるといったって、
 目の前は数メートル先すら見えない猛吹雪。




早く戻って来いよぉぉぉぉぉ!!!!!」









 と、何度叫んだことか。
 ・・・確かこれで7回目だ、ブックマンの自分が言うんだから間違いない!


 不意にが走り去っていった方向に目を凝らしてみるが、
 未だに彼女が走って帰ってくる気配もない。



「・・・っあ〜〜〜〜さみぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!」
































「あれ、ない・・・」



 事の発端はつい数十分前に起きた。



「何がないんさ?」



 雲行きがどんどん怪しくなっている昼下がり。
 任務も無事に終え、早く汽車に乗って帰りたいと少しばかり足早に歩き
 ようやく駅のホームに到着した時だった。

 ふと声がしたので振り返ると、
 横で並んで歩いていたはずのが少し後ろにいて立ち止まっていた。
 切符を通す直前のところで・・・




?」




 は切符を確認して再び差し出している駅員を無視し、
 必死に何かを探している。




「・・・どうしようラビ、報告書忘れたかも。」


「え、マジで!?」

「・・・ごめん、マジ。」



 苦笑いしてがラビを見ると、ラビはあちゃーと手を額にあてた。




「あー、ひょっとして宿?」


「うん。私、急いで取ってくるね!」


 駅員に切符をそのまま預け、はバッと団服を翻した。



「俺も行こうか?」

 さっと走り出したの背中に声を掛けるが


「大丈夫、すぐ戻るから待っててね!!」


 と言ってそのまま再び走っていった。







 だから待っているのだ。
















 そしたらこの悪天候・・・

 あの後すぐに雪が降り出し、気づけば今のような吹雪になってしまった。




「いつになったら帰ってくるんさ、さみぃってのに!!」



 
 駅のホームだけあって屋根は付いているものの、
 吹雪いているので時々雪が風とともにラビの体を駆け抜ける。


(しかも駅員いねーし。)

 気づけば駅の改札に駅員の姿はない。
 改札から無駄に少しだけ離れたプレハブのような建物に明かりがついている。
 ・・・奴は避難したんだ。
 と思うのは当たり前。(マジかよ駅員、ありえねー!)









「・・・〜・・・」



 だんだんと意識が朦朧としてきた。
 寒い地域だからと厚手のコートを団服の上に着ているが、それでも吹雪けば寒い寒い。

 本当は待っている間に汽車は来ていたのだが、
 寒さに負けて1人先に行くなんて彼氏としても男としてもよろしくない。
 そう思って見送った。(ちなみに次は1時間後)(田舎め!)




「・・・ひょっとして立ち往生してんのかねー?」

 吹雪いたせいで宿に着けても戻れないのかもしれない。
 そう思うと同時に、
 宿にあったあの大きな暖炉の前で1人ぬくぬくしているの姿が頭をよぎった。
 なんて失礼な想像を・・・!とも思ったが、ならやりかねない。

「マジ最悪。やっぱ俺っちもついてきゃよかった・・・。」








「----!ラビ〜!?」




 ビュウビュウと吹雪く中、ふとそんな声が聞こえた。



(あ〜なんか幻聴が聴こえる・・・が呼んでる)(てか死神が呼んでる?)
(そうか俺とうとう死ぬんだ。)(って俺、まだブックマンになってねーよ!!)


「ラビ!ゴメンねラビ!!」


「うぉっ!?」




 目を細めてカタカタと震えていたラビは、すぐ傍で叫ばれてハッとした。





!?やべ、マジで幻聴だと思ってた。」


「あっはは、すっかりガタガタ震えてるもんねー!」


 すぐ傍にはがいて、呑気にそんなことを言っている。





「随分遅かったじゃん!汽車行っちゃったよ、次1時間後。」


「ハッ!?なにそれ!!じゃぁ宿でぬくぬくしとけば良かった!!」


 目の前で震えている彼氏を尻目になんて酷い事をぬかすんだこの子は・・・!



「・・・じゃぁぬくぬくしてればよかったさ。」


「えっ・・・うーん・・・そうだけど、ラビ1人だったら嫌だったからさ!」


 ちょっと不貞腐れて言ってみるが、は逆に心配そうにそんなことを言う。
 全く、これで俺の機嫌は一気に回復するってわかっているのだろうか?
 いやわかっていない、のこれは無自覚だ。




「だから宿主さんに止められたんだけど、振り切って必死に走ってきちゃった!!」


 でも、そっちの方が嬉しい。
 無自覚に俺を心配してくれているから、なんて口では照れるから言わないけれど。
 とりあえず目の前でへらりと笑っているをぎゅっと抱きしめた。
 はえへへ、と嬉しそうな声を漏らして顔を上げた。




「ゴメンねラビ、寒かった?」


「寒い、ちょー寒い!早く戻って来い!ってちょー連呼した!!」


「あはは、私も早くラビのとこに行きたーーーいって思ってたよ!」

「じゃぁいいや。」

「なにそれ。つかラビ、鼻赤いし!」

もじゃん!!」


 お互い赤くなった鼻を指しながらケラケラと笑っていると、ビュウ!と大きな音が聞こえ、








「んなっ・・・!?」


「んぎゃーーーーーーー!?!?!?!?」






 物凄い突風が駅のプラットホームを駆け巡った。



「な、なんなんさあれ!ちょーさみぃっ・・・!!」




「・・・ぷっ。」



「・・・ぷ?」


 突然の突風(もちろん吹雪)に驚いていると、下から噴出す音が聞こえた。
 不思議に思って見下ろしてみると、



「あっはははははははは!!!やだラビ、雪だるまーーーーー!!!!!!!!!!」



 が大声で腹を抱えて笑っていた。

「は?雪だるま?」


 わけもわからずが指差す頭上を見ようとしたが、
 あいにく自分から頭上が見える程俺の目は機能性抜群ではない。


?」


「ラビ、頭に雪被ってる!雪だるまみたい!!かーわいいーーーーー!!!!!」


 どうやらさっきの吹雪(の突風)のせいで頭が白くなっているらしい。
 それがにはツボらしく、尚も腹を抱えて笑っている。

 ちなみに風はラビの背後からだったので、
 抱きしめられていたは雪を被っていない。





「可愛い!可愛すぎる!いいねラビ、写真撮りたい!!!」


「おいおい、お前自分の彼氏が可愛いってそれいいの?」


「だって可愛いんだもん。オレンジの雪だるまだね♪」


 ラビは可愛いと連呼しているが気に食わないのか、
 プルプルと頭を振って雪を落とした。



「あーーー!つまんない。」

「つまんなくない、全然つまんなくない!」

「不貞腐れないでよラビ〜!」

 はクスクスと笑いながら、まだ落としきれていない雪を落とそうと背伸びした。
 だが、それを見越したラビはの腰に手を回して一瞬の内にキスをした。



「ちょっ・・・ラビ!?」


「俺怒らせたが悪いーーー!」


 突然のことで顔を真っ赤にさせているが可愛くて、
 ラビはもう一度触れるだけのキスをした。





顔真っ赤!」


「ラビのせいでしょ!もぅ・・・。」


 は雪を落とそうとしているのか唯怒っているのかわからないが、
 ラビの頭をポンと叩いた。



 すると向こうからこっちにおいでと呼んでいる駅員の声が
 ビュウビュウと吹く風の中から聞こえた。
















 orange snowMan    


(今頃呼ばれたねラビ、もうちょっと早ければよかったのに。)
(そうさねー。)(いやいやナイスタイミング、おかげでキス出来たし。駅員グッジョブ!)







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これ、クリスマス用に書いてた奴です。
そうです、例の奴です。(笑)
ちょっと変えて、冬のお話でした!(ちゃんちゃん♪)



 2009 01 18