「総悟・・・どこ行くのー?」

















「さぁ、どこでしょうねぃ。」


「総悟もわかんないとこ行くの!?」




 何を言っても取り繕ってもらえず、というかはぐらかされてしまう。







「総悟ーーーー!!!」


「うるせー、少し黙れや。」



「えぇ、私が悪いの!?違うでしょう!!」












 朧雲    

















「私、土方さんのマヨネーズ買いに行かなきゃならないんだけど・・・」



 真選組に厨房のお手伝いとして入って早数年。
 だが、いかんせん彼の動向はいまだ不明。




(わかったらある意味すごいかも。)


「土方のクソヤロー、そんなもんに頼んだのか。」



「うん、ほぼ毎日のことだけどね。
 いくら買ってもすぐ消費しちゃうんだもん・・・」



「マヨラーが。」

「それ全国のマヨラーに対して失礼だよ?」




 元々は土方の言伝(マヨネーズ買ってこい)を受けて、
 一人で商店街に来たのに、どこからか沖田がやってきて、
 今に至る。

 手を取られ、スーパーとは逆方向へと歩かされているのだ。





「で、どこ行くの?」



「どっかサボれるところでぃ。」

「え、やっぱりサボりなの?」



 駄目だ、こんなところを土方さん辺りに見つかれば、
 確実に怒られる。ただの巻き添えだっていうのに!!




「だ、駄目だよ総悟!
 総悟は見廻り、私は買出し、ちゃんと仕事しなきゃーーー!」


、今からそんなに仕事熱心じゃぁ体が持ちませんぜ?」




「総悟が熱心じゃなさすぎなのよ!」






 あーもう、なにを言っても本当に取り繕うとしない。
 これ以上商店街から離れたらアウトだ。








「総悟、お願いだから・・・
「コラー総悟ーーー!!!テメー見廻りはどうしたーーーー!!!!」


 いやーーーー土方さんだーーーーー!!!


「土方さんこそ街中じゃなくてこんなところで何してるんでぃ。
 さては隠れてサボろうって魂胆だなぁ?」

「オメーに言われたかねーよ、オメーにだけはな!!
 郊外も見廻り区域なんだよ。」



 チッと舌打ちした沖田は歩くのを止めた。
 まぁ、そうするのが当たり前だろう。
 これ以上歩いたら土方の乗ったパトカーにぶつかる。




「・・・あ?、テメーもなにしてやがる!?」


「うぇっ!?あ、あの・・・」

 それまでさり気なく沖田の後ろで身を潜めていたも、
 呆気なく見つかってしまった。





も俺と一緒でサボリでさぁ。」


「そ、総悟!?ご、誤解ですよぉ!!」



「大体、毎日毎日にマヨネーズ買わせにいくなや土方コノヤロー。
 マヨネーズでが穢れちまう。」

「テメー、マヨネーズ馬鹿にすんなよ!!」


(え、そこは私じゃなくてマヨネーズ庇うんですか?)






「てーことで、
 はこれ以上マヨネーズを買いに行きたかなくてサボってんでさぁ。」


「勝手に私の行動決定付けないでよ!?」



テメーいい度胸してんじゃねーか。」


「いや、あんたも真に受けんなよ。」





 ・・・あ、しまった。






「あんただとー?」


「ち、違います!
 今のはつい出てしまったというか、つ、ツッコミですよ!!
 まるで土方さんがボケてるみたいだから!!」



「俺がいつボケたーーーー!!!!!!」





「ひぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!」


 駄目だ、死ぬ、殺される。
 土方さんの目が怖い。
 なんでこんな目にあってんだ!
 元々は私のせいじゃないもん、総悟のせいだもん!!

 そう思ってバッと沖田の顔を見上げると、
 沖田はニヤッと笑った。



「そんじゃぁ、いっちょ逃げるかぁ。」

「・・・うん、今はそれが得策です。」



 そう言って二人で一斉に回れ右して走り出した。





「テメーら待ちやがれーーーー!!!」



 もちろん土方が追ってくるが、
 総悟は巧みに細い路地裏などを通って上手く土方を撒いた。
 気づけばもう土方の怒声が聞こえない。









「よーしここまでくれば大丈夫でぃ。」


「は、はっ、はぁ・・・も、やだーーーなんで私までこんな目にーーー。」



が引き金引いたんだろう?」

「総悟が誘導したんでしょ!!」



 さすが、沖田は少し汗ばんでいるものの息はあまり乱れていない。
 それとは正反対に息も絶え絶えなは、
 膝に手をついて乱れた息を必死に整えている。




「・・・あちゃー、朧雲でさぁ。」


「・・・おぼろぐも??」

 突然沖田がそんなことを言うもんだから、は沖田の方へと顔を向けた。
 すると沖田は空を見上げていたから、今度はつられても空を見上げた。

 黒い雲が空一面に張り巡らされている。



「・・・朧雲って、この雲のこと?」



「こりゃー一雨くるなぁ。
 、雨が降る前に帰りまさぁ。」

「えぇぇっ!?」


 さっきまでそこらじゅうを(おそらく)適当に徘徊していたというのに、
 雨が降るからと言って屯所へ帰るという。


「いやいや、意味わかんないから!
 え、総悟一体なにがしたかったの!?」


「なんでぃ、そんなに雨に濡れたいんですかぃ?」


「いや、それは嫌だけど・・・」




 じゃぁ行きますぜ、と言って再びの手をとり歩き出した。


「・・・そ、総悟?屯所帰ったら土方さんに怒られるよ?」


「じゃぁどこへ行くんでぃ。」



「・・・せ、せめてマヨネーズ・・・」

「あんなもん見たくもねぇ。」







「・・・総悟、なにがしたかったの?」




と一緒にいたかっただけでさぁ。」


 は驚いて総悟の背中を凝視した。
 でも、前を歩く総悟の顔は見えない。



 でも、うっすらと、おぼろげながらだけど、照れてるように見えた。





「・・・そっか。」


 そりゃぁ、サボって正解。
 このあと土方さんに怒られるのも、悪くないかも、と思った。

 こういうたまの優しさが、すごく嬉しい。





 ふと空を見上げると、朧雲がただひたすら空一面に広がるだけだった













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タイトルと噛み合わなかったかも。。。



 2008 11 23