パチパチパチパチ




 乾いた音が辺り一面に響き渡った。













「・・・なにか、ご用ですか?」


「そんな他人行儀にしないでよー。」



 いびつな、この世のものとは思えない奇怪なもの
 ---AKUMAの残骸---の中心に、
 大きな鎌を持って立っている
 黒いマントに身を包んだ一人の少女。
 その少女に拍手を送りながら飄々と近づいてくる、
 タキシードを着た褐色の肌をもつ男。










「・・・なにしに来たのよ。」


「いやー相変わらず素早いね、AKUMAを倒すの。」

 さっすが、と言う男に向かって、
 少女は思い切り嫌そうな顔をした。



「ねぇ、質問に答えてよ。
 なんでここに来たの、ティキ?」


に会いに。」







 そう言って、の前に立った長身のティキを
 見上げるように睨むと、可愛いなーという声が降ってきた。


「会いになんてこなくていいんだけど?」


「なんでそうツンケンするんだよ、まぁそれも可愛いから許す。」



「許すもなにもないわよ!」


 ティキがの頬をぷに、と触ると
 間髪いれずにがその手を払いのけた。





「なんで来たのよ!
 私、これでもエクソシストよ?」


「知ってる。」



「任務中だし、周りにあるのAKUMAの残骸だし。」


「もちろん知ってる。」



 の眉間にどんどん皺が寄っているというのに、
 ティキはずっと笑みを絶やさない。


「・・・なんだかすっごく気分が悪い。」


 そんなティキを見て、は一言吐き捨て、
 持っている鎌をくるりと回した。
 すると鎌は見る見る内に小さくなり、それをポケットに突っ込んだ。




「イノセンスそんなに扱って可哀想ー。」


「ノアのあんたにだけは言われたくないわ。
 それに、これならすぐ取り出せて便利なのよ。」

 いつ襲われても大丈夫。
 そう言ったは少しだけ笑った。



「怖いねー。」

「うるさいなー。」


 はとうとう呆れたのか、
 ティキを無視してAKUMAの残骸を踏みつけ歩き出した。








「ちょっと待ってよー!」


 だがティキも後を追って歩いてくる。
 お互い歩調は変えず、一定の距離を保ったまま。





「ついてこないでよ。」


「そんなんで本当についてこなくなると思ってるの?」



「・・・ついてくんな。」


「やーだね。」



 カチンときたが足を止め、勢いよく振り返った。
 だがそこに、ティキはいない。

「ティキ?・・・っ!?」

 首を傾げると、突然後ろから気配を感じて振り返る。









「もうちょっと注意してないと駄目だよ。
 急接近出来て嬉しいけど、AKUMAがいたら大変。」


 ティキはそう言っての腰に手を回して顎に手をかけた。



「っ・・・離してよ!!」


 咄嗟にがその手を振り払おうとするが、その前に唇を奪われた。




「んっ・・・やだってば!」

 思いっきり肩を押すと、案外ティキはすぐに離れた。


可愛い。
 でも今は一旦おあずけ。」


「これ以上もいらないわよ!」




「そんなことより、来るよ?」



「・・・わかってるわよ。」



 ティキがの背後を指差した。
 も振り返り、ポケットに突っ込んでいたイノセンスに手を伸ばす。


「・・・おいで、AKUMA・・・」


 サッとイノセンスを取り出しくるりと回すと、
 鎌が大きくなった。



 それを構えるの後ろ姿を、ティキは愛おしそうに見つめていた。





















「・・・まだいたの?もう帰れば?」


 そして少女は再び、AKUMAの残骸の真ん中に立つ。
 ティキはその傍へと黙って近づく。




「帰らないよ、せっかく久しぶりに会えたのに。
 次いつ会えるかわからないだろう?」


「もう会わなくていいんじゃない?」




「そんな悲しいこというなよ。」


 再びの前にピタリと立ったティキは、
 また彼女の腰に手をまわした。




「なんでエクソシストの私なわけ?」



がいいんだよ。」





「ノアなのに?」


「ノアなのに。」




「私を殺せ、って言われたら?」


「そりゃぁ殺すんじゃない?」




「じゃぁもう会わないでよ、殺されたくない。」


「言われるまではしないよ。
 ちょっとでもお前に会いたいんだから。」








 は怪訝な顔をしてティキを見上げ、



「・・・歪んでるわね。」


 そう言い捨てた。



 ティキは一瞬驚いたが、すぐにまたクスリと笑った。

「だって捻じ曲げないと、に届かない。」


 そういっての顎に手をかけた。
 は驚いていたが、やがてティキと同じようにクスリと笑った。


「・・・そうね、こうでもしてくれないと、届かないわね。」


 2人は可笑しそうに笑って、どちらともなく唇を合わせた。













 屈折    


(愛の形を歪ませて、君に届け)










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ティキ夢書くとは思わなかったなー。
以外にいけるよ!!!



 2008 11 27