「ななな、何これーーーー!!!!!!!」
その日、恐らく誰よりも大声を出したのはこの私だ。
自信を持って言えよう。(こんなのに自信なんてもちたくなかったけど。)
「・・・、うるさいよ。」
しかしその大声でさえ軽くあしらうのがご存知雲雀恭弥なのだ。
「だだだだって!ありえないでしょ!!」
「そんなに以外?」
「うっわ、何そのちょっと羨ましいだろ的な発言!むっかーーー!」
「結局君は何が言いたいの?」
「ぐっ・・・それは・・・」
「それは?」
「き、恭弥はなんでそんな上から目線なのよ!!!」
さっきから出てくる発言は全部上から目線だ。
そりゃ、いろんな意味で恭弥に敵うわけないとは思ってるけど
(思ってる時点でもう嫌になる。)
だからって何よ、偉そうに!!!
「・・・そんな事が言いたかったの?」
「・・・・・・違うもん。」
「じゃぁなに?」
いい加減素直に言いなよ、とため息混じりに言われると私は落ち込むどころか逆にムカついてしまう。
「だってだって、なんで恭弥がチョコ貰ってんのよ!!!!!」
ズビシッ!と指差すテーブルの上には、綺麗にラッピングされた箱やら紙袋がざっと10個以上。
高級そうなブランドものから手作り感溢れるものまで多種多様。
「貰っちゃ悪いの?」
(だからテメーなんでそう毎回上から目線!?)「そうじゃなくて、何、あんたってモテるの!?」
そう驚いて言うと、執務用の机に座っている恭弥はこっちを向いて意地悪くフッと笑った。
「そこ!笑うとこじゃないよ!!」(ビシッ!)
「は何を言っても文句しか言わないね。」
んなもんテメーがムカつく言い方しか出来ないからであって
決して私が短気だからではありませーん!(いやどっちかってーと標準の人間より短気だけど)(標準?)
そう叫ぼうとも思ったが、流石にそこまで言えばこの目の前にいらっしゃる並盛最強の不良がキレるからやめた。
「・・・だって、私というものがありながら・・・」
変わりにそう呟くと、やっぱり返ってくるのはため息で。
あーもうなんでコイツは私にため息ばっかりつくの!
これで幸せ逃げたって文句言われても私受け付けないから!!
(いやそれは恭弥のキャラじゃないか。)
「は馬鹿だね。」
「・・・何故そうなる。」
「おまけに底なしの阿呆だね。」
「おーいどこまで言いたいんだオメー。」
「ドジで間抜けで短気だし?」
「そこ今関係ないよね〜?」
「やっぱり最終的には馬鹿だね。」
「いい加減にしやがれコンチクショー!!!!!!!!!」
あまりに酷い言い方に(酷い!酷すぎる!)(横暴だよ!!)
思わずチョコの置いてあるテーブルをバン!と叩くと案の定恭弥は私を睨みつけた。
うるさいって?仕事の邪魔ですって?
えぇそうでしょうともでも怒らせたのはそこの少年です。
そう、あんただよ!!!!
「だってそうでしょ!?彼女いるんだよ!?ここに、目の前に!!
だからってチョコ受け取るかよチクショー!
まさか可愛らしく渡してきたから拒否出来なかったとかそんな青春な言い訳でもかましますか!?
つーかお前モテるんだな以外に!!!!私という彼女がいながら!!!!!なんで!?!?!?!?」
「なんでって言われても困るんだけど。」
「また上から目線ーーー!!!」
人が普段に比べたらもの凄く素直に不満を言ってるっていうのに!
(軽くおっぱずかしいことも含まれてるってーのに!)(キレ気味だけどな!!)
なんだってコイツはやっぱり上から目線なんだ!?
言って損したよいやマジ本当に!!!
「別に貰った時はいなかったし。」
「・・・そうですね・・・」
「それに勝手に応接室に入って置いていったのもあるし。」
「・・・さいでっか・・・」
「どちらかというとこっちの気持ちは無視されてるってわけ。」
「・・・あらドンマイ・・・」
「・・・今度は随分と静かになったね。」
なんだよ君は。
さっきはキレたら睨んできたくせに、今度は静かになったら変だって?
どんだけ理不尽なんだよ!!
こっちはもう精魂尽き果てたわ!!!
「・・・今日は帰る。」
そう言ってソファの下に落ちてる鞄をガシリと掴み応接室の扉へと歩き出した。
「じゃぁなんでここにきたの?」
「さーなんででしょーねー・・・」
なんででしょーねー、じゃないよ。
あーあ、こんなつもりなかったのに。
うあ、駄目だ・・・益々落ち込んできたぞ・・・消えたい。
けど、
「」
けど、あぁやっぱり私駄目だ。
いろんな意味で駄目だ。
恭弥に呼ばれて私はそれを無視出来ない。
だからとりあえずその場で静止。
「・・・なによ。」
「用があるから来たんでしょ?」
「ま、また上から目線ですかー?」
私の顔は扉に向いてるから恭弥の顔は見えない。
けど、絶対見たらまた私が怒り出すような顔をしてるに決まってる。
でもさっきみたいにはキレられない。
本当、あり得ないくらい沈んでるな私・・・
「質問を質問で返さないでくれる?」
「・・・用なんてないよ!
いっつも用がないのにここ来て怒ってるのは恭弥でしょ!!」
「まぁそうだね。」
「だったらっ・・・」
「でも、今日は用事あるでしょ?」
くあームカつくなー。
やっぱり上から目線だよ。
そんな恭弥を私が睨んでやろうと振り返ると、
恭弥はいつものようにニヤリと笑ってる、と思っていた私の考えはあっさり砕かれ、
ただただフッと笑っていた。
それがものすっごく綺麗なもんだから、あぁ、だから私は沈むんだよ。
「・・・その顔のおかげだよね。」
「なにが?」
「チョコだよチョコ!」
そりゃ確かに並盛最強の不良でもさ、めちゃめちゃ規則に厳しい風紀委員長でもさ、
やっぱり恭弥はカッコイイんだよ。
私だってそんな恭弥に悲しいかな惚れちゃったんだもん。
他の女の子が好意寄せないわけがないんだよ・・・
でも、それでもこうやって恭弥と応接室にいたり、
廊下で見かけただけで気安く話しかけられる女の子は私だけで、
だから当然私と恭弥が付き合ってるってのも並中じゃ有名な話だから、まさかチョコ貰ってるなんて思わなかったんだよ。
だから、怒って、怒って、それで沈んじゃうんだよ。
って言うのもやっぱり恥ずかしいからそういう思いを込めて睨んでやった。
(テレパシーとは違う。)(テレパシーなんて高度な技私には真似出来ません。)
でもそれでも恭弥は全部お見通しみたいにひとつ小さなため息をついて
(だから幸せ逃げちゃうよ?)
それでちょいちょいと私を手招きした。
それに簡単に導かれる自分もどうかと思いながら近づくと、
恭弥に手をとられ一気に引き寄せられた。
鞄をまた床に落として恭弥の膝の上に乗っかった。
「・・・あーっと、恭弥さん?」
「だからこれは僕の意思で貰ったんじゃないんだけど?」
「あー・・・そういえばそんなこと言ってたね。」
「わかってるなら拗ねないでよ。」
「だって・・・(むぅ〜)こ、告白とかしてきた子とか、いないの?」
「何人か直接渡してきたけど、別になかったよ。」
「ちょくっ・・・!?」
「まぁ、渡すっていうより投げてきた子もいたけど。」
「・・・楽しそう。」
「まさか。」
「だって!」
「しつこいよ。」
今は私の方が位置的に上から目線なのに、下から上目遣いのように見上げてくる恭弥はやっぱり上から目線だ。
(日本語がおかしい。)(けど気にしない。)
「僕が以外にそんな事言われて嬉しいわけないでしょ。」
そんな事してきたら噛み殺すよ。
とご丁寧に脅し文句のような恐ろしい事まで付け加え、恭弥は言い切った。
それはもう、スッパリと。
この人に女の子を大切にしなさいと教育した人はいないのか?
と思わず余計な事まで考えてしまうくらい。
でも次の瞬間、私は自分でもわかるくらい頬に熱を感じた。
めちゃめちゃ熱い。
「だから、待ってるんだけど?」
でも恭弥はそれに気づかないように笑って手を差し出してきた。
絶対気づいてるくせに・・・だって、もう片方の手はしっかり握られたままだもん。
そこから伝わってる、百パー。頬と同じくらい熱いから・・・。
「・・・何をでしょうか?」
それをあえて触れないでいてくれるのは有り難いが、それでもやっぱり恥ずかしい。
「何って、今日はバレンタインでしょ?」
けど、普段の恭弥からは想像もつかないような言葉が出てくるなんて、一緒にいるのが私だからかな。
なんて馬鹿みたいに自惚れてしまったもんだから、更に頬と手の熱が増して目眩がしそうだ。
そうですよ、今日はバレンタインですよ。
だから私もそこらの女の子のように貴方に渡しにきたんですよ・・・
でも、でもさー恭弥。
私もう怒らないし、沈んだりもしないんだけどさ。
でもどうしてか、今は素直に渡せそうもない。
何度もおっこどしたから、きっと鞄の中にあるチョコはころころ転がって早く出してほしいってねだってると思うけど、
ゴメン、もうちょい待って。
(今はまだ、私の手だけのっけておこう。)
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ウチのヒバさんは硬派なので、(これって硬派っていうのか?)
比較的ヒロインがハチャメチャになります。
でも最後はラブラブなんだ!!
2009 02 12