「はぁ、今日も疲れたーーー!!!」
「がっくん、帰り寄り道せーへん?」
「お、いいなどっかでなんか食おうぜ!お前らも行くか?」
「どうします宍戸さん?」
「俺も腹減ったし、行くか長太郎。」
「はい!じゃぁ行きます!」
「俺も行くC〜!!あとべーは?」
「めんどくせー帰る。」
「ホンマ跡部は連れへんな〜。」
「なーなーところでは?」
「あ、そや・・・なんやさっきから姿が見えへんなー・・・???」
「寝てるんじゃない?」
「慈郎じゃあるまいし・・・どうせ片付けがてらサボってるんだろ。」
あのやろーと眉間に皺を寄せた跡部を先頭に、今日も今日とて部活は終了、ただ今部室へご帰還中。
「用が終わったから先に戻ってるだけじゃねーの?」
「そうですよ、先輩ですからね。」
「クソクソ!一人で上がってずりぃ!」
「それ本人の前で言ったらアカンよがっくん、殺されるで。」
「俺の膝枕で寝たいC〜」
「せや、のやつ!ジローだけは寛大な態度ってなんでなん!?」
「いや、確かに先輩は結構適当で怖い人ですけど、酷い扱いをするのは忍足先輩だけですよ?」
「なんやて!?」
「そうだぜ侑士、お前と一緒にすんなよな!」
「跡部も結構そうだろ?」
「アーン?何か言ったか宍戸?」
「せや!俺は跡部ほどちゃう!」
「いや同レベルだよ。」
「「一緒にすんじゃねー(すんなや)!!」」
わいわいと騒ぎながら部室に到着し、勿論先頭の跡部が躊躇なくドアを開けた。
ガチャ・・・
---ガタン!ガチャガチャバタン!!
「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」
「あ、お、おかえり!」
その中にはさっきまで話題に上がっていた我が氷帝学園テニス部マネージャーの姿があった。
「あ、もう終わりの時間!?ごめんね、片付け終わらせて先に上がってたから!!!」
そんなは自分のロッカーの前でロッカーを隠すように立っていた。
「な、なんですかみんな無言!?最後までコートにいなかったのがそんなに不満!?」
「・・・。」
「別にいいじゃん今に始まったことじゃないんだから!
それくらい許してくれなくちゃちゃん辞めてやるわよ!?」
「おい!!」
「ひぃっ・・・何!?」
跡部がツカツカとの傍へと歩いていく。
だがはそこから逃げようとかしなかった。
「・・・そこをどけ。」
「な、なんで!?」
「どけっつってんだろ。」
「なんでよ、跡部のロッカーあそこだし!ここ私のロッカー!!」
「なんか隠しただろ?」
「・・・へい?」
跡部はぐいっとの腕をとった。
「俺様がドアを開けた瞬間なんか隠しただろ?」
「・・・うーん?何の話かな??」
「確かに隠したよね。」
「って嘘とか隠し事下手だもんな。」
「なんやガチャガチャうっさかったしな〜。」
「そこ!うるさいぞ!
ジローは寝てろ!がっくんは跳ねてろ!そして忍足は死ね!!」
「なんで俺だけそんな酷いん!?」
「跳ねてろってなんだよ!!」
「の膝枕じゃないと寝ないC!!」
「うるせー!!」
跡部はそのままの腕をぐいっと引いてロッカーをガチャリと開けた。
「あっ!!」
そして中からおそらく先ほど隠したものであろうブツを取り出した。
「おい、これなんだ?」
「あーいや・・・その・・・」
「・・・なんだよ、それ。」
「ボロボロじゃないですか!!!」
跡部が手にしたものを見て宍戸と長太郎が血相を変えて近寄ってきた。
後からジローと岳人と忍足も近寄ってくる。
「ま、まずい・・・」
その集団に思いっきり顔を背けはポツリと呟いた。
いつもならここで跡部か忍足あたりに頭をはたかれるが、今はみんな跡部の手中のものに注目している。
「これ、どないしたん?」
「転んだ。」
「転んだくらいでこんなにならないよね?」
「何言ってるのジロー、私を誰だと思ってるの?
これくらい派手に転べるわよ!!!!」
「でもなんか、いたるところ切れてる・・・」
「それはねがっくん、転んだ拍子に茂みにダイブしちゃって・・・」
「茂みにぶつかってもそんなに切れません・・・不自然ですよ・・・?」
「嫌だなーチョタ、自然の原理に不自然もクソもあるかよ〜!」
「、ホントのこと話せ。」
「なーに宍戸、疑ってんの?」
「たりめーだ、何だよこれ!!!!」
宍戸は跡部の手中にあるそれを掻っ攫うとの前に突き立てた。
「どう考えても誰かにやられたもんじゃねーか!!!」
それは・・・のジャージ。
しかもズタボロの。
部室に入った当初から疑っていたレギュラー陣は騙されないという顔だ。
「あー・・・っとぉ・・・」
冷や汗ダラダラのはどうにかして逃げ出したい気持ちでいっぱいだが、
生憎レギュラー陣がを囲っていて逃げ場がない・・・!
「誰にやられた?」
「うん?土と草木?」
「アーン?」
「・・・その・・・ちょっぴり女の子??」
え、えへ?と引きつった笑みを浮かべると、途端に周りからはため息ため息ため息・・・
「ちょ、何そのため息!!」
「この馬鹿が!」
「馬鹿って・・・うわ!」
跡部に怒鳴られてカチンときただが、バサリと頭上に何かが降ってきて反論出来なかった。
「・・・跡部?」
「着てろ。」
それは跡部のジャージだった。
のジャージはズタボロなので、今は半そでのTシャツしか着ていない。
いくら春先だからってそれは流石に肌寒い。
「でも跡部は寒いんじゃ・・・」
「俺様は練習後だから問題ねーよ。」
「・・・どうも。」
は渋々お礼を言うとそのジャージを肩から羽織った。
「・・・先輩・・・」
「こ、今度はチョタ・・・?な、何・・・ってひやっ・・・!!!」
次に長太郎が一歩前に出ての頬に手を添えた。
「冷たいですよチョタ君の手・・・」
「腫れてる・・・」
「え!?嘘!ちゃんと冷やして痛みも引いたし・・・・・・っあ。」
しまった・・・とが顔を引きつらせると、長太郎は再び血相を変えてどこかへ走っていった。
「殴られたのかよ!?」
「い、いや・・・」
「確かに少し赤いC。」
「そ、そんな事は・・・」
「これは流石にやりすぎやな。」
「ちがっ・・・」
「言え!どこのどいつにやられた!!!」
「いやだから・・・」
「お前ら少し黙れ。」
おかげで怒涛のように詰め寄られるが焦っていると跡部が口を開いた。
「、全部正直に言え。」
「え・・・」
「今までにもあったのか?」
「な、ないよ!!」
「・・・なら今日が初めてか。なんですぐに言わなかった!」
「だ、だって・・・!」
「だってもあるか!何かあってからじゃおせーんだよ!!」
「跡部の言うとおりだ!」
「クソクソ!大怪我してからじゃ遅いんだぞ!」
「そうだC!!!」
「せやで!」
だが結局みんなに詰め寄られてしまう始末。
「だ、だって・・・」
そこまでされると流石にも根負けしたのか、弱弱しく言葉を零した。
「だって、なんだ!」
「怒鳴るな跡部!わ、私だって怖かったけど、けど・・・」
の目に涙がジワリと浮かぶ。
「けど・・・みんなに迷惑掛けたくなかったんだもん・・・」
そう言うと我慢出来ないのかうぅ、と泣き出してしまった。
それを見たみんなはビックリしたが、すぐにジローが動いてに抱きついた。
「ごめん!別に泣いてほしくって怒ったわけじゃないC!」
「せや、むしろ怒るべきなのはをこんな目に遭わした奴らや!」
そう言って忍足はの頭を撫でた。
「でも黙ってるなんて水くせーぞ!クソクソ!!」
岳人も忍足の横で必死に慰める。
「そうだぜ、俺達を見くびるんじゃねー!」
宍戸もまた同じく。
「いいか。こういう事はちゃんと言え、隠すな!
本当に何かあってからじゃ遅いんだよ!」
そう言って跡部も頭を撫でた。
「先輩!!!」
そしてどこかへ行っていた長太郎も戻ってきた。
「チョタ・・・?」
が顔を上げると、長太郎は濡れたハンカチをの赤みがかった頬にそっと当てた。
「もう少し冷やしたほうがいいですよ、痕が残ったら大変です。」
「うぅ、チョタ〜〜〜〜〜・・・」
はそのハンカチを頬に当てたまま素直に受け取ると更に涙を流した。
「みんな今日はいい人すぎる・・・いっつも酷い扱いなのに・・・」
「そらがおかしな行動ばっかりするからやろ、ってちゃうわ!」
「勝手に一人で突っ込んでろ眼鏡。」
「それやそれ!お前かて俺らをぞんざいに扱うからやろ!けど、今はちゃう。」
「そうだC、だって女の子なんだから!」
「になんかあったら俺ら困るんだよ!」
「お前はマネージャーでもあるし大事なダチなんだからな!!」
「先輩が困ってたら助けるのは当たり前です!」
「お前が一人で抱え込む必要はねーんだよ。
困ったら頼れ、迷惑になんて思わねーんだから、いいな?」
「みんな・・・ありがとう・・・!!!」
そう言ってはまた俯いて泣き出した。
---と、その時。
ガチャッ・・・
「・・・何やってるんですか?」
部室に入ってきたのは、日吉。
他のレギュラー陣と違い、少しだけ走りこんできたのだ。
ちなみに樺地は平部員とともに片づけ中だ。
「・・・あの・・・」
だが日吉が入ってきたというのに部室にいるレギュラー陣はこっちを見向きもせず、
なぜかの周りに寄ってたかっているのだ。
と、意味のわからない雰囲気に日吉が少し戸惑っていると、ふと宍戸の手にあるジャージが目に入った。
小さめのジャージは、恐らくのものだ。
物凄くズタボロになっている・・・
まさか!と思った日吉だが、すぐにある事に気づいた。
・・・まるでわざとやったみたいなズタボロ加減に。
ジャージは所々切れているが、その切り方もなんか丁寧だし。
土の付き方もただ転んだり押し倒されたとしても不自然な付き方だし・・・
そう思って渦中のに目を向けると、は日吉にしか見えないように顔を上げて、
------ニヤリ、と笑った
「!!!」
ビックリした日吉だが、ある事に気づいて部室の壁にかかっているカレンダーに目を向けた。
そして次に冷めた目線を笑っているに気づかず慰めているレギュラー陣に向けた。
(・・・みんな気づいてないのか。今日は4月1日だって。)